今回は酒井さん
酒井 順子(さかい・じゅんこ)
藤沢さん
エッセイスト。長岡の花火を、初めて見に行きました。
消えゆくものの美しさ

 東北のある町の盆踊りを見に行った時、妙にエロティックな空気を感じた私。顔は笠(かさ)で隠れているのに、白いうなじはあらわ。踊りながらちらりと見える脛(すね)。…と、踊り手達の色気は、ミニスカートの若者の比ではありませんでした。


 <1>下川耿史(こうし)『盆踊り-乱交の民俗学』(作品社・2,160円)を読んで、「それもそのはず」と納得した私。江戸時代の盆踊りは、男女が日常の規範から逸脱して性的な開放感に浸る貴重な機会だったのだそう。そのせいでしょう、明治維新後は混浴禁止令と共に、盆踊り禁止令が多くの自治体で発せられます。 昭和初期には、「東京音頭」が大ヒット。そのあまりに明るい曲調に、盆踊りのエロティックなムードは一掃されたらしいのですが、夏の夜の群舞は少しはエロい方が楽しそう。盆踊りの励行は少子化対策の一助になるのでは? などと妄想しながら読みました。


 盆踊りで食べたい、かき氷。今はかき氷ブームだそうですが、その先鞭(せんべん)をつけたのが、<2>蒼井優『今日もかき氷 完全版』(マガジンハウス・1,620円)です。「カーサブルータス」での、ひたすらかき氷を食べ歩く連載が一冊になった本書を読めば、「本当に好きなんだ!」と実感します。 

天然氷を訪ねたり、鹿児島でしろくまを制覇したり。はたまた沖縄、台湾、ハワイでもかき氷を食べまくり。見た目も美しいかき氷と、それを食べる美女とのマッチングが涼しげであると同時に、かき氷ガイドブックとしても便利な一冊です。


 はかなく消えゆくものが美しく見える、夏。その代表格が花火であり、<3>山崎まゆみ『白菊』(小学館・1,620円)の帯の、美しい写真に思わず目を惹(ひ)かれました。ここに写る花火の名こそが、「白菊」なのです。


 新潟県の長岡で毎年行われる花火大会で、例年最初に打ち上げられる花火が「白菊」。そこには、昭和二十年の長岡大空襲で亡くなった千四百八十余人の方々に対する、鎮魂と慰霊の気持ちが込められます。 白一色の白菊を生み出したのが、長岡の伝説の花火師、嘉瀬誠次さん。九十歳を超えて今もお元気な嘉瀬さんの、出征、シベリア抑留、戦後シベリアの空に上げた手向けの花火…といった人生を追いつつ、観客が涙を流すという長岡の花火が抱く「物語」をひもとく本書。花火ははかなく消えますが、そこに込めた思いの重さが、ずっしりと残ります。

『盆踊り-乱交の民俗学』
『盆踊り-乱交の民俗学』
下川耿史(こうし)
(作品社・2,160円)
『今日もかき氷 完全版』
『今日もかき氷 完全版』
蒼井優
(マガジンハウス・1,620円)
『白菊』
『白菊』
山崎まゆみ
(小学館・1,620円)