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3冊の本棚

文章のプロが毎回テーマに沿って、3冊の本をセレクト。
作家という書き手の視線で選ばれた本の魅力をご紹介いたします。

中江有里さん
(なかえ・ゆり)

女優・作家。どんな性別でも否定されず、自分自身を肯定できる社会であってほしい。心からそう思うのです。
中江有里

「女らしく」って何

 自分の性別が女であることを痛感したのは第二次性徴期でした。我が身に訪れた急激な変化に心が追いつかず、戸惑っていたことが思い出されます。振り返れば子どもの頃から「女らしく」「女らしくない」と大人たちに言われるたび、モヤッとした違和感を覚えていました。一体「女」って何なのでしょう。

 〔1〕『有馬稲子 わが愛と残酷の映画史』(筑摩書房・2,052円)は映画評論家・映画監督の樋口尚文氏が聞き手となり、女優・有馬稲子さんの壮絶な幼少期から大スターとなった映画黄金期、そして現在までが綴(つづ)られます。宝塚から映画会社に移る際「演技の勉強をさせてくれる」ことを契約条件に挙げたり、岸惠子、久我美子と文芸プロダクション「にんじんくらぶ」を設立するなど、驚くほど行動的な有馬さん。当時の映画界と自身を客観的かつ綿密に記憶しています。
 本書に収められる若き日のスチール写真の有馬さんの魅力的なこと!そんな銀幕のスターが「女」の顔を見せるのは17歳年上の監督との恋愛について語る時。自身にも他人にも厳しい批評眼を持っていた女優が、唯一見抜けなかった男のずるい本心。女の悔しさが何とも生々しく伝わります。
 この夏、仕事で広島県尾道市に滞在した際、〔2〕林芙美子(ふみこ)が『放浪記』(新潮文庫・853円)に著した箇所を確認しました。
 「海が見えた。海が見える。五年振りに見る、尾道の海はなつかしい」
 「放浪者」芙美子は古里尾道に戻った際、涙したそうです。それから再び上京し、職を転々としながら、やがて自らの人生を記しました。
 『放浪記』の主人公の「私」はいわゆる良妻賢母のような女性と違う、経済的にも自立した自由な女だからこそ、この名著は生まれました。

 〔3〕雨宮処凛(あまみやかりん)『「女子」という呪い』(集英社クリエイティブ・1,188円)は「女のくせに」「女なんだから」と「女」というだけでさまざまなプレッシャーを背負ってしまっている(いた)自分に気づかされます。長い間、周囲の大人やメディアを通じて刷り込まれた「呪い」を解くのはなかなか大変です。

 最近も女だからという理由で試験の点数を減点されたなんて信じがたい事実を聞き、やり切れない気持ちになりました。でも常識も価値観も時代に応じて少しずつでも変わっていくものです。そのためには「おかしい」ことに慣れてはいけない。
  • 『有馬稲子 わが愛と残酷の映画史』
    (筑摩書房・2,052円)

  • 『放浪記』
    林芙美子(ふみこ)
    (新潮文庫・853円)

  • 『「女子」という呪い』
    雨宮処凛(あまみやかりん)
    (集英社クリエイティブ・1,188円)