本紙新キャラクターに聞く「私と新聞」
本紙新キャラクターに聞く「私と新聞」

日々配達される新聞は、受け取った人の数だけ、読み方、生かし方があります。今年3月から本紙イメージキャラクターを務めるお笑い芸人で作家の又吉直樹さん、タレントの遼河(りょうが)はるひさんにとって、新聞とはどのような存在でしょう。6日からの春の新聞週間を前に語ってもらいました。 (聞き手・後藤国弘)
お笑い芸人・作家
又吉 直樹さん


またよし・なおき 1980年生まれ。大阪府出身。高校卒業後、NSC東京校に入学。同期の綾部祐二さんとお笑いコンビ「ピース」を結成。コントや舞台の脚本も手がけるなどマルチな活動を続け、芸人活動の傍ら執筆した「火花」が昨年、芥川賞を受賞。


 若い頃から、同世代で新聞をしっかり読んでる人たちに対してはなぜか、憧れじゃないけど、うらやましさみたいのありましたね。
 芸人になるために上京し、仕事もないような時期に、雑誌とか見てると、有名な大学の学生モデルさんのプロフィルみたいのが載っていて、項目の一つで「読んでいる新聞」も書いてあるんです。勉強もスポーツも恋愛も、僕よりはるかに充実している人間が、ちゃんと新聞も読んでんやねっていう。そこから、「大学行って朝新聞を読む暮らししてみたかったなぁ」なんて思うようになった。
 僕のネタの作り方だと、そんなに時事を盛り込むっていうことはないんですけど、今世の中でどんなことが話題になっているかというのはある程度頭に入ってないとできないですよね。こっちが意図してなくても、僕たちが用意してたネタの設定が、例えば大きな事故が起こったことをすぐに想像してしまうネタだった場合に、舞台に立つ芸人がそれを知らないってことはまずい。
だから、もちろん劇場には新聞はありますし、世の中で起きていることを知るということはたぶん最低限やってることだと思います。誰でも日常生活の中では自分の興味あることばかりに気が行きますよね。だから僕が新聞を作ったらすごく偏った新聞になります。文学やお笑いやったり、洋服のことばかりの新聞。それはそれでいいと思うんですよ。ただ、もっと世の中全体の興味であったり、社会共通の重要なことっていうものは皆が共有しないといけませんよね。それを新聞が担ってくれていると思うんです。
 もちろん自分が好きな趣味とかそういうものについて考える時間は置いておきたいんですけど、じゃ自分の思考とか視点をまるっきり変えて、政治とか経済とか事件とか、その一つ一つに自分がどう考えていくのかっていうふうに考えようとしたら、やっぱり新聞を活用する。新聞を自分の生活のもう一つの軸にする、それだけで世界が広がると思うんです。
 だから今は新聞、読みますし、相方(ピースの綾部祐二さん)にもすごい勧めてるんですよ。「ほんまにMC(司会者)目指すなら新聞とか読んだ方がいいで」って最近も言ったんです。でも相方文字読めないんですよ(笑)。それは冗談にしても、僕とのコンビとしても相方には新聞を読んでもらいたいですね。
 コンビの役割としてボケ役の僕の方は変なことを言いたいんですよ。僕が斜めから言った変な意見を相方にはぶっ壊してほしいんです。「それは違う。なぜならこうだから」って。でも、僕が言った変なことが勝っちゃうとダメでしょ(笑)。新聞を読んでいれば、なぜ僕の言う変なことが「違う」のか、説得力のある鋭いぶっ壊し方ができると思うんです。  社会的に大きな事件、事故、出来事が起きたとき、他人の口から自分の耳にニュースが入って来る場合、その人の言葉と絡まっていますよね。そしたら、その人、あるいはその人に伝えた人たちの意見をのみ込んだ形で入って来る。それはあまり良くないと思うんです。
あるニュースについてどう思うかっていうと、最初は百人いたら百通りの考え方があるはずなんですが、それの中の大多数が思う意見っていうのがだんだんと真ん中で仕上がったような形になってしまう。
同世代のやつと話しているのに、なんか六十代代表みたいなこと言っているやつたまにいるじゃないですか。テレビ見ていて、むちゃくちゃしっかりした人の言葉で聞くと、すごい説得力があるから、それを聞いて理解しちゃった気になるんじゃないかと思うんですね。その言葉って日本の人口の中で一番分厚い部分の意見を代弁してるから、多数決やったらそっち勝つけど、その考え方をなんでオレら世代のやつが持たないかんのかって考えたら、あ、自分で考えてるんじゃないんやなっていうふうに思う時あります。
 やっぱり、起きたことをまず自分で受け止めて、こう思うって考えた上で、じゃあ、なんで自分がこう思ったんやろうとさらに考える。
自分の世代やら所得やら親の年齢やら、考えた背景にはいろいろ複合的な意味があるだろうし、逆に自分と別の環境、他の条件の人なら、違う考えを持つだろうなと分かってくる。
だれもが人生、子どもから始まってるじゃないですか。最初子どもやったから、ルール作るとことか、決めるとことかに参加してへん時期があって、それでも世の中は回っていっちゃうから、世の中のことに無頓着でも、許されるというか、いいと思っちゃってるんですけど、それを一回認識し直さないとダメだと思うんですよね。世の中のルールとか意見が形成される作業に自分が加わっていかないと。そのためには、新聞読まんとダメですよね。
 もともと新聞って日常風景の中にありますよね。朝起きてポストから取って、あるいは母親が取ったものが食卓の上にあって、ゴハン食べながら読むとか、生活の中に組み込まれやすい。それってけっこう大事なんやないかと思っています。
タレント
遼河はるひさん







りょうが・はるひ 1976年生まれ。名古屋市出身。元宝塚歌劇団・月組男役スター。数々の舞台を経て、2009年退団。現在は女優・タレントとして活動。バラエティー番組にも多数出演し、活躍の幅を広げている。


 朝、日が昇る前、まだ暗がりの街で、新聞店には明かりがポツンとついているでしょう。中の様子も分かるんですね。新聞の束を仕分けしたり、自転車に載せたり、店員さんたちが一生懸命作業している。ロケに行くと帰りが明け方になることもけっこうあって、そんなときに、見かける新聞販売店の光景が私にはすごく印象深いんです。

 新聞は、書く人がいて、印刷する人がいて、配る人がいますよね。配られる朝までに、すごく多くの人の手がかかっているんだなあと実感もします。記事も一つ一つ、それぞれの記者さんが書いていて、よく読むと、どう思って書いているのかとか、記事ごとの視点も見えてきます。そこが新聞の面白いところですね。記事の大きさも違うわけですが、隅っこにあるような小さい記事を読むと、メーンのニュースとはまるで違う発見があったりして、それも魅力ですよね。
 本当に重大なニュースが起こったときには号外も出るでしょう。号外はだれもがもらいますよね。日本のことでも世界のことでも、新聞で大きく報じられることの重要性を皆が分かっているからだと思うんです。

多くの人にとって新聞は生まれてから身近にある存在で信頼感が染み付いているんでしょうね。多くの人に関わるニュース、みんなが知っておくべきニュースを新聞が担っていることを分かっている気がします。
個人的に私が好きな記事はヒューマンストーリーですね。ボランティアなどで社会貢献している人や、さまざまな考え方や決心から会社を辞めて、新たな世界にチャレンジしている人の物語。そういう記事に出会うと、「こんな人がいるんだ! こういうこともできるんだ!」って、刺激を受けたり、心を打たれたりすることけっこうあります。そういう個性のストーリーが新聞の個性にもつながっていると思いますね。

 今、私はテレビの情報番組やバラエティーに出演させていただくことが多いんですが、自分が生放送で発する言葉が全国で流れるわけで、発言の影響については責任を持たなければいけないと考えています。そのためにも、社会の基礎知識についてはしっかり勉強しなければなりません。そういう意味でも今、新聞は欠かせない存在です。




 
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