• 2012年
    (平成24年)
    07月25日
    (水曜日)


    東京23区編

    ホンモノの東京新聞はこちらから


    今回は夏休みスペシャル!西山繭子さんと一緒にヘリコプターから取材します 今回は夏休みスペシャル!西山繭子さんと一緒にヘリコプターから取材します

     私の仕事での移動はほとんどが東京?京都?大阪で、ごくたまに博多・小倉、名古屋、札幌に行く。どうしても地方に仕事で出かけて戻ってくる時は新幹線が多くなる。珍しく飛行機で羽田に戻ってくる時に、上空から東京の「背中」を見下ろすことはあれど、遠過ぎて、大まかな地形や河川、巨大なランドマークとなる建物しか認識しにくい。そこそこの高さからまとまった時間観察する機会に、そうは恵まれない。言ってみるものだなあ。今回は東京新聞に「やはり東京を書いていく上で、全体を俯瞰で見てみなければ!」と私が強く主張したところ、何と経費的に二つの企画の抱き合わせならば、と許可が出た!抱き合わせましょうよ、何でもそれが良い!独禁法違反はいけないけれども、合理的に能率良く行きましょう!道路工事も掘り返すのは一度にして、ガスも水道も電気も電話もいっぺんに!

     というわけで、東京新聞ほっとWeb「東京23話」で連載をなさっている、作家で女優の西山繭子さんとご一緒することになった。私の芝居も見に来てくださったことがある。私が毎週日曜日の昼にやっているNHK-FMの番組「トーキング・ウィズ・松尾堂」にも、お父様の伊集院静さんと、放送上での初共演を果たされた。小説も書いて舞台もやって映画やドラマにも出て、超美人でおまけに飲むと面白くなる西山さんとヘリコプター取材をご一緒できるということで、気分も物理的にも高揚決定。



    ヘリコプターが苦手だということを忘れていた編集長!

     この時点まで、私自身がヘリコプターが苦手だということをすっかり忘れ去っていた。高所恐怖症とまではいかないけれども、あんなに周りがスカスカの乗り物が、スカイツリーの天辺辺りの高さでウロウロするのだ。実はヘリコプターにいやな思い出があった。今から20年近く前だろう
    か。毎年正月3日の朝に放送されていた生番組で、明石家さんまさんが司会だった。私は正月に温泉につかる風流な人々をリポートすべく、ヘリコプターで岐阜の上空を飛んでいた。操縦士を含めて4人しか乗れない小さな機で、ディレクターとカメラマンが後部座席、前には操縦士さんと私。ところが、普通に乗っているのでは後頭部しか映らないので、私のシートはカメラマンと向かい合うよう後ろ向きに取り付けられている。前部分の機体は球状になっているので、背もたれはリクライニングとは逆に鋭角に背を圧迫しており、カメラが下界を撮るために私たちの側のドアは取り外されている。
    1月の冷気と、燃料の臭い匂いから逃れられない状態でシートベルトを腹に食い込ませ、私はヘリ酔いと戦っていた。東京の浜
    松町の辺りから乗って、途中に給油もあっただろうか。空きっ腹の二日酔いだった私は、スタジオのさんまさんから呼びかけがあって、私の顔が画面上は大写しになり、さあ喋ろうと思った刹那、喉の奥に胃の中の色々な物が逆流噴出して来たのだ。ここで口からスプラッシュさせてしまっては、全国の正月が台無しになると思い、一瞬醜い表情を見せただけで、問題の物質は飲み込み、リポートをやり切った。
    「今、下呂温泉上空です!優雅に露天風呂を楽しんでいる皆さんの頭頂部が湯気の中で蠢いています……」
     しかし、今回はか弱き女性と一緒である。私が乗り物酔いなどを心配してオロオロしていては、彼女が心配だ。そして、報道のヘリコプターは、構造的にオスプレイよりは安全だ。
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    ヘリに乗る前に色々な説明を受けたりする!
     機長の祈るような仕草にビビりながらも、レクチャーを受ける。東京23区の地図を見ながら説明を受けるも、上空ではそれを確認することはできそうにないので、地上にいる時点から上の空だ。「融和団結安全飛行」の文字が、意外と恐怖を煽ることにここの皆さんは気付いていない。
    祈るようなポーズの機長 いろいろとヘリに近づく二人


     さあ出発だ。平気だ。いよいよ機の側へ。「あさづる」と名付けられたこのヘリは、どこか外国製だ。ヨーロッパの方だった。大丈夫だ。6億円もするのだ、大丈夫に決まっている。6億円。6円置くんとちゃいますよ。これはトミーズのネタだ。飛ぶんだから、落ちがついてはいけません。山田君、昇太さんから2枚取って。
     機体の尻についている風車のようなところは、ぐるりが囲われている。小さめの機体なので、回転していると羽根が見えずに、すぱあっと大けがを負ってしまう危険があるからだ。よく出来ている。6億円。大丈夫だ。何かを企むような表情の西山さん、カメラマン、操縦士さんと機内へ。 機体を確認してまわる編集長
    携帯トイレを渡される
     上空ではエンジン音が五月蝿くて会話ができないので、ヘッドホンを装着の上、スイッチやペダルを踏んで会話をする。全員のヘッドホンに聴こえる仕組みになっているから、西山さんに変なことは言ってはいけない。トイレはない。小舟ではないので、縁に立って海へ用を足すわけにはいかないので、携帯トイレを持たされ、準備万端。え、嘔吐用か。それはそうだ、女優の前で小便はできない。 ヘッドホン使用時の説明を受ける編集長
    離陸! 離陸後すぐにデジカメを取り出す編集長
    興奮気味の編集長、いざ東京上空へ!
     浮いた!上がった!高まった!技術の方や東京新聞の担当者、マネージャーらを「睥睨(へいげい)」しながら、私たちは機上の人となった。それはもう私は落ち着いたものだった。おもむろに自前のデジタル・カメラを取り出し、撮られる立場であることなどは忘却。そうしなければ、下呂温泉の二の舞だ。消極的選択で、浮かれた振りをしただけなのだ。あ、ディズニー・ランドだ!ディズニー・シーが見える!シンドバッドのアトラクションだ!私は行商人の声を出しているのだぞ!
    ディスニー・シーを遠くから見る
    あっ葛西臨海水族館も負けてないぞ!

    少し落ち着こう。東京23区がテーマだ。足下を見れば、葛西臨海水族園が見える。負けてはいない迫力だ。それにしても、東京の街はよくここまでびっしりと隙間なく人口建造物を凝集させたものだ。上空から見ると、まるで縮緬の皺のように地面に細かいモザイクが広がり、それぞれでそれぞれの人間の営みを想像させスカイツリーだ!東京スカイツリー!展望台の皆さん、今日は!そちらの展望台より、こちらの方が少し高いようだね、はははははは!
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     高い方の展望台には巻き付いた蛇のようなデザインが見てとれるが、これをここまで大きく見るためには、やはり飛行するしかないだろう。展望台のガラスの中に、私たちを見ている群衆がいる。みんな、ドンマイドンマイ!ゆっくり楽しんでくれたまえ!しかし、スカイツリーは肉眼で見ても、コンピューター・グラフィクスに見えてしまう、浮世離れした表情を持っている。人間とは、何というものを作ってしまうのか。広角レンズで撮ると、地球の丸みのような広がりを感じるが、地球の丸みだった……。




    ちなみに撮影は真冬です。上空から見る東京ドーム

     後楽園の東京ドームは、デペイズマンの手法を用いたシュールレアリスムの作品を鑑賞しているような気分になる。この唐突な白さと泡の塊のような丸みは何だろう。やってくれたなあという感じが悔やまれないだろうか。
     皇居敷地内の建物に見える静謐なカーブには気品を感じ、上から見下ろしていることにそこはかとないもったいなさを感じてしまう。そしてその近くにある日本武道館のどっしりとした安定感に、天辺の玉葱型を見て奇妙な安心感を覚える。千代田区は、相当大きな面積を緑が締めているが、機能重視のオフィスエリアとのコントラストがドラマチックですらある。

    ちなみに撮影は真冬です。
    気品を感じる皇居敷地内の建物

    千代田区上空から見る緑とオフィスのコントラストに感動

    巻き付いた蛇のようなデザインの天望回廊
    巻き付いた蛇のようなデザインの天望回廊

    ちなみに撮影は真冬です。
    木々の中に立つ武道館

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    防衛省の屋上の記号はもしや軍事機密なのでは?
     高度を下げてもらって色んなビルの屋上を見るうち、ひとつの疑問がわいた。屋上の表面に、すごく見易くくっきりと「◯の中にH」と表示されているのはヘリポートだろう。ヘリの「H」だということは私にだって想像がつくけれど、それ以外の、そこかしこのビルの屋上に、「◯の中にR」と書かれているのは、一体何位を現しているのだろう。操縦士さんにみだりに話しかけてはいけないのだが、西山さんが知りたがっているような雰囲気にして投げかけたところ、これは「レスキュー」の「R」なのだとか。つまり、「◯にR」では、離着陸はせず、ヘリでホバーリングをしながら救助隊員が被災者を助ける場所、という意味だった。間違わないようにしなければ、と気持ちを引き締めるも、この情報が私の役に立つ時は来るのだろうか。ちなみに、写真の堂々とした二つの「◯にH」は、防衛省の屋上のそれだった。何か、見てはいけないもののように感じたのは私だけだったのだろうか。これは、軍事機密なのかも知れないのだ。
     上空から見ると、東京駅や国会議事堂はプラスチックモデルなのではないかと思うようにこじんまりとして見える。同じ俯瞰でも、グーグル・アースなんかじゃ感じないのだ。不思議な肉眼による3Dで他の六本木ヒルズや東京ミッドタウンでは感じないのが不思議だ。印象として記号化された時間の熟成度が関わるのだろうか。
     東京タワーなどは、まさに記号化された存在で、本当におもちゃにしか見えない。この取材をした時点では、写真のように、まだ天辺のアンテナが曲がった状態だった。昨年の東日本大震災の地震で曲がったままになっているのだ。スカイツリーがドンドン背を伸ばしている時にこういうことが起きるとは、東京タワーもなかなかのドラマ作りをして踏ん張っている。

    Rはレスキューのアール
    Rはレスキューのアール

    堂々としている防衛省のヘリポート
    堂々としている防衛省のヘリポート


    現在工事中です。
    現在工事中です。

    東京拘置所はとっても斬新な建物に見える!
    泣く子も黙る東京拘置所を上空から眺める

     この建物も斬新だ。中央に円盤状の「◯にH」が据えられ、6方向へ食指が伸びて、上から見るとまるで「立体的雪の予報」か、「巨大な米印(アスタリスク)」のように見える。これは泣く子も黙る、かの東京拘置所だ。ご存知の方も多いだろう。これを読んでいる人の中にも、お世話になった人が……、いないだろう。しかしこれは洒落たことになっている。これは仏教においての、罪を犯した人が地獄の手前で通る六道の辻を現していて、それぞれの棟が、「地獄」「餓鬼」「畜生」「修羅」「人間 」「天」を表してある。嘘
    最後に嘘をつく編集長最後に嘘をつく編集長

    編集長松尾貴史
    松尾貴史

     1960年神戸市生まれ。大阪芸術大学デザイン学科卒業後、研究室勤務のかたわら、ナレーターとしてデビュー。テレビ、ラジオ、映画、舞台、エッセイ、イラスト、カレー店など、分野にこだわらず活動。著書に「接客主義」「ネタになる統計データ」など。最新刊は「なぜ宇宙人は地球に来ない?笑う超常現象入門」を編み直した「超常現象・都市伝説」(PHP研究所)。