• 2012年
    (平成24年)
    10月17日
    (水曜日)


    渋谷区編PartⅠ

    ホンモノの東京新聞はこちらから


    本日の編集長「座布団を投げないでください!」一人金星遊び中 エビ天ぷらができました!!今日編集長

     台東区といえば浅草、と連想する人が多いのではないか。この街には古い東京が残っている、というと陳腐な言い草になってしまうけれども、少なくとも「人情」や「おせっかい」や「損得抜き」や「やせ我慢」という感じの前時代的な言葉が似つかわしい。あくまでも印象である。私がそういう印象を持ってしまっているのは、単に希望的観測なのかもしれないが。
     よく、大阪のおばちゃんをユーモラスに語るとき、必ずと言っていいほど使われるのが「豹柄好き」という表現だろう。ところが、この浅草という街にも、豹柄やアニマルプリントの衣料は少なからず売られているし、上手に着こなしている人もいるのだ。「おせっかい」もそうだ。キャンデーやみかんを配る人は見かけないけれども、ここは「かかわり合い」を楽しんでいるように見える街だ。
     浅草と言えば、東京を代表する街の一つだけれども、例えば観光土産は別として、ショッピングやビジネスで日本中から集まる人は、あまり浅草のような土地に集まらないのではないか。
    青山、赤坂、恵比寿、渋谷、六本木、銀座、新宿辺りをうろついて、そこにいる大勢の人を「東京の人間」と勝手にレッテルを貼り、「道を聞いても素っ気ない態度を取られた。東京の人間は冷たいでえ。大阪やったら、いらん言うてもそこまで連れて行くで」などと論評する人もいる。しかし、そんな街を歩いている人の、結構な割合が「他所から来た人たち」だということを忘れてはいないだろうか。虚勢を張ってなんとか都会人の顔を作っているのだ。そんな人に道を聞いても「わかりません」と素っ気なくコミュ二ケーションを断ち切られるのは当然ではないだろうか。
     もちろん、浅草にもいろんな地域から多くの人がやって来ている。しかし、効率のみを最優先するような人は、この街では少数派だろう。おそらくは下町の気風になじめる人だけが定着しているのではないか、と想像する。近辺の住宅街できょろきょろしていると、「どこをお探し?」なんて声をかけてくれるおばさんがいるのだ。冷たいなどと感じることはない。東京と言えども、一つの地方であり、どこだって人情は同じだ。みんなが他所で語りたがる「おしゃれ系の街」が異常なだけなのだ。知らないけど。

    まずは合羽橋探索開始!!
     さて、なぜか今回は合羽橋から始めることにした。私好みの、いかにもキッチュな「河童伝説」が少々無理矢理生み出され、人々は金ぴかの像まで拵えて崇めているからだ。江戸時代、この辺りに伊予新谷の城主の下屋敷があって、下級武士というか足軽たちが、給金だけでは食えないので、雨合羽を作る内職をしていて、このあたりの橋の欄干に干していたことからこういう呼び名になったという話を聞いたことがあった。しかし、ここの記念碑に書かれている解説は、少しどころか相当違う。文化年間、合羽屋喜八という人が、私財を投げ出して掘割工事を施し、水はけをよくしようとしたところ、なかなかはかがいかない。それを見物していた隅田川の河童達が心を打たれ手伝ったと。そして、その河童を見た人は運が開けて商売繁盛、というめでたい話が記されている。
     素晴らしい話だけれども、合羽屋という名前の人物を河童が助けたとは、あまりにも語呂合わせがすぎましょう。とは言え、ここは理屈よりもムードを重んじましょう。しかし、この河童像の、アジアンチックな色調と質感はいかがか。のでポケットに入れて持ち帰り、忘れて洗濯をしたら消えてしまった。
    その台座には作品のタイトルが。「かっぱ川太郎像」とは、伝説とはいえまたもや直接的なネーミング、しかしそれよりも不可解なのは、その下にある「台東区長 吉住弘 書」とあることだ。ここにご自身の名前はいりますか?外れたところに、原型と鋳匠のクレジットが彫られているけれど、この人たちの名前を優先するべきではと独りごち、合羽橋探索へ。
     ある店先に立つと、「係のものがご案内しますのでしばらくお待ち下さい」とあるのでしばらく待ったけれど、諦めて歩き始めた。その立て札自体が売り物だったのだ。ここは合羽橋道具屋街。わかっているくせになあ。 少しだけ待ってみました…。 少しだけ待ってみました…


    かっぱ河太郎像と松尾編集長 かっぱ河太郎像と松尾編集長

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    珈琲の匂いに誘われコピ・ルアクを!
    珈琲の香りに誘われる編集長

     東京中と言っても良いくらいに、あちらこちら近郷近在から、飲食店関係者や調理好きな人たちがこの地へ道具を買いに来る、ある意味プロフェッショナルが集まる街だ。そんなプロ臭がするコーヒー豆の店を発見。店頭には、「ユニオンの豆珈琲通を唸らせる 玄武洞」という句が掲示されている。大量の、様々な豆があふれる店内には、毎日4、5杯は飲むほどコーヒー好きの私にとってはめくるめくような焙煎した豆の苦甘い香りが充満していて、すこぶる居心地がよい。いや、純喫茶ではないので長く居座る場所ではないのだけれど。
     一度本物を飲んでみたいと思っていた高級コーヒー豆「コピ・ルアク」がある! 50グラム2,100円也。
    これはご存知の方も多いと思うが、インドネシアのジャコウネコが飲み込んだコーヒー豆が未消化のままうんこさんに混じって出てきた物を洗浄、天日干しした豆だ。 50グラム2,100円也。 十数年前、最初にこの話を聞いたときは、「ただのフェティッシュ的な物」としか思えなかったのだけれども、興味だけは燻り続けていた。 50グラム2,100円也。 今、私はこれを原稿を書きながらまさにいただいている最中なのだけれど、うんこさんの中にあったからかどうかはわからないが、確かに程よい甘みと香りのよさに、気高さを感じる。毛高さと言っても良い。なぜ。とにかく旨い、美味い。こうでも思わなければ元が取れないぞ。50グラム2,100円也。
    コピ・ルアクを発見!

    珈琲の香りを楽しむ編集長

    プロフェッショナルが集まる街

    日本の「店頭芸術」を体験する!!
     ここは玄人だけの街かと言うと、そうではない。そもそもは玄人のための物だったけれど、観光資源となった物がある。ご存知、日本が編み出した「店頭芸術」、そう、「食品サンプルー!」とドラえもんの先代の声のような勢いで声に出して言ってください。全国、というより全世界からこのキッチュな文化目当てに人々が押し寄せているのだ。押し寄せるほどではないけれど、ちらほらいるぞ。余談だが、料理を一食分、本物を作って店頭に置いて客寄せをしている飲食店があるけれど、どういう神経をしているのだろうか。食べ物を、毎日無駄にすることを前提に食材を使って、生ゴミにしているのだ。もちろん、店先に飾っている間に乾き、延び、虫がたかる。ここはぜひ、質感の変わらない食品サンプルに代えていただきたいものだ。
    リアルなすき焼きサンプル

     しかし「ロウだから融けやすいじゃん」とおっしゃるあなた、中年以上ですね。今時は変色、変形、変質がしにくい材質に変わっているのですよ!最近の造形術の進化たるや、目を見張るものがある。器ごと床に落として割れたかけらからこぼれ出るビーフシチューのムンクの叫びを見よ。シラタキの透明感と、焼き豆腐のテクスチャーを見よ。梅干しのマグネットを見よ。そして、なぜか伝統的に、麺類はうどんも蕎麦もスパゲティも、箸やフォークがつまみ上げたところで固まっているポルターガイスト風の物が多い。自分で持ち帰って制作できるキットまで売られていた。最近、食品サンプルを並べるタイプの飲食店は減った気がするが、こういうアイデアを繰り出す業者は生き残っていくのだなあ。まつを。

    シチューの中にムンクの絵が!これもサンプル

    様々なサンプルに見入る編集長 見事な手さばきでレタスを作る先生 先生の天ぷらサンプル
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    編集長も挑戦!
    編集長も挑戦!

    エビ天ぷらができました。
    エビ天ぷらができました。

     そんなことをぶつぶつ呟いていると、「やりますか」と声をかけられた。やりますか、と聞けばその前に「一杯」が付くのは常識だが、違った。サンプルを作らせてくれるというのだ。ここはそういう体験をさせてくれる店らしい。昔の、加工がしやすい、ロウを使った実習だ。冷静な先生の手本と指導で、私の作品が出来上がった。美味そうでしょう。食べられません。写真で見ると、天ぷらを作っているところ、高温の油の中に手を入れているような錯覚が起きてしまう。私だけか。なかなか器用に作るものだと感心してくださったあなた。実は誰でも作れるように手取り足取り教えてくれるので、これぐらいは普通なのです。実習を終えて出てくると、歩道の端には巨大な海老のにぎり寿司が。持ち帰りは禁止の模様。

    エビのにぎり寿司を発見!ラッキー
    海老のにぎり寿司を発見!ラッキー

     次は鍋屋さんだ。鍋屋というと、しゃぶしゃぶ屋さんとかてっちり屋さんを思い浮かべるが、もちろん道具としての鍋の専門店。大鍋、小鍋、両手鍋、片手鍋、土鍋、雪平、行平、寸胴、餃子、オムライス、ピザ、タジン、パエリャ、中華……。

    お鍋の博物館へ突撃!
    お鍋の博物館へ突撃!

    気がつけば、長時間煮込んでも焦げにくいという、日本ならではの技術の結晶、「プロキング4.0」を買ってしまったではないか。なぜか95万円もする鍋ロボットまである。どういうニーズを見込んでのことかは、とてもスタッフの皆さんが良い人過ぎて聞きそびれてしまった。
    95万円の鍋ロボットと記念撮影
    95万円の鍋ロボットと記念撮影

    河童の来襲とおじさんの休憩!?

    突如現れる河童たち
    突如現れる河童たち

     メインの通りだけではなく、脇道に入ると、次から次へと河童たちが存在を主張してくる。恐ろしいまでに河童は私たちに襲いかかる。あくまでもイメージだが、襲いかかってくる。店先にも、自販機の裏にも、地面にも、広場にも、軒先にも、雀荘の看板の前にも。

    おじさんの休憩
    おじさんの休憩

    あそこにも河
    あそこにも河童

    あ、これは違った、おじさんが休憩しているだけだ。裸だから勘違いしたではないか。
     伝統あるこの街らしい店に、「御神輿・太鼓司 宮本卯之助商店」がある。店には祭礼の用具や邦楽の楽器などが網羅されていて、おそらくは日本中の古典芸能に携わる人がここで道具を買い求めるのだろうと想像させる。今日たまたま再訪したが、前に一度だけ訪れたのは講談師が講釈のときに使う「張り扇」を買うためだった。「くしゃみ講釈」という古典落語を落語会でやるのに、見台をぱぱんぱんぱんと叩くのに必要で、「あれはどこに売ってる物かなあ」と探しまわっていたら、落語家の桂吉坊さんから「東京やったら宮本卯之助商店にありますがな」と教えてもらって赴いたのだった。一つで良いのに二つセットだったことに少々ひるんだことは言うまい。言うとるがな。
    鍋の説明を聞く編集
    鍋の説明を聞く編集長 河童と戦う編集長
    河童と戦う編集長
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    世界の太鼓資料館・太鼓館で太鼓をたたきまくる!
    宮本卯之助商店に突
    宮本卯之助商店に突入

     店の上には、古今東西の太鼓という太鼓が収蔵されている太鼓の博物館がある。太鼓だけではない。広義の打楽器と呼ばれる物や、歌舞伎などで効果音を出すのに使われる道具類が、基本的に手で触って実感する形で展示されている。案内してくれる女性の方が美人揃いであることにも驚いた。因果関係の分析は、また次回に。嘘。
     仲見世に近づくと、人力車を多く見かけるようになる。ちょいと微笑ましかったのは、人力車の研修をやっている車に鉢合わせしたときだ。バスやタクシーは見たことがあるが、車夫が車夫を乗せて、ひっひっふうと走っているのはなかなかに「ごっこ」の感じがして微笑ましいものだった。
    鼓に叩き方を教わる
    鼓に叩き方を教わる

    世界の太鼓をたたきまくる編集長
    世界の太鼓をたたきまくる編集長

     



    人力車の研修風景を眺める
    人力車の研修風景を眺める

    ぜいたくなカレーをパクリ編集長!
     
    下町カレー食堂KORMAへ
    下町カレー食堂KORMAへ

     さて、私が素通りしにくい業種の一つに、カレー店がある。「下町カレー」ときた。南インドと北インドのカリーは相当違うと聞いているが、下町のカレーは、山の手とは違うのだろうか。「コルマ」という店名は、ヒンディ語で「ぜいたく」という意味らしい。

    スポット情報

    ●かっぱの河太郎像
    http://www.kappabashi.or.jp/home/kawatar
    o.html


    ●世界の珈琲とお茶の専門店 ユニオン
    台東区西浅草3-7-3
    TEL 03-5826-5922
    http://www.kappabashi.or.jp/shops/154.html

    ●元祖食品サンプル屋 合羽橋ショールーム
    台東区西浅草3―7-6
    TEL 0120-17-1839
    http://www.ganso-sample.com/

    ●お鍋の博物館 合羽橋店
    台東区西浅草2-21―4
    TEL 03-5830-2511
    http://www.nakao-alumi.jp/

    ●宮本卯之助商店
    台東区西浅草2-1-1
    TEL 03-3844-2141
    http://www.miyamoto-unosuke.co.jp/

    ●下町カレー食堂KORMA
    台東区浅草1-16-7
    TEL 03-3844-5203

    コルマカレーを前にウキウキ編集長。
    コルマカレーを前にウキウキ編集長

    なるほど、手間隙をかけて質の良いタマネギを8時間にもわたって炒め続けるという常人を超えた作業に、「ぜいたく」と言わずして何というか、といった感じだった。やはりこの甘みはタマネギの力だったのかと、カレー好きの人にはわかる味だった。お近くにお越しの説は是非お試しを。
     しんなか通りのウサギのゆるキャラに脱力しながら、「店頭就寝厳禁」の注意書きに緊張しつつ、気がつけば浅草所縁の藝人たちの正蔵、もとい、肖像を拝みながら、私はコップ酒の正蔵、もとい、衝動を抑えきれず、無理やりに今回の徘徊を予定終了と決めたのだった。

    緊張する注意書き
    緊張する注意書き

    「しんなか君」と記念撮影
    「しんなか君」と記念撮影

    様々な藝人の肖像を楽しむ
    様々な藝人の肖像を楽しむ

    浅草演芸ホール前にて本日の徘徊終了~
    浅草演芸ホール前にて本日の徘徊終了~





    編集長松尾貴史
    松尾貴史

     1960年神戸市生まれ。大阪芸術大学デザイン学科卒業後、研究室勤務のかたわら、ナレーターとしてデビュー。テレビ、ラジオ、映画、舞台、エッセイ、イラスト、カレー店など、分野にこだわらず活動。著書に「接客主義」「ネタになる統計データ」など。最新刊は「なぜ宇宙人は地球に来ない?笑う超常現象入門」を編み直した「超常現象・都市伝説」(PHP研究所)。