• 2013年
    (平成25年)
    01月23日
    (水曜日)


    江東区

    ホンモノの東京新聞はこちらから


    焼き鳥片手にほっと一息、編集長 焼き鳥片手にほっと一息、編集長  江東区と聞いてまず私が思い浮かべるのは、東陽町の「若竹」という幻の寄席だ。幻、と言ってもそれほどドラマチックなものだったのかどうかはわからない。単に、行ったことがないのに閉館してしまっていた、というくらいの意味合いなのだけれど。1980年代後期、それはもう銀行が「どうか金を借りてください」と言いまくっていたバブル真っ最中の時期に、落語協会分裂によって寄席から閉め出されていた圓楽一門の、若手の活動の拠点を必要としていた五代目三遊亭圓楽師が、何と7億円もかけて建てたのだった。まだこの寄席が運営されていた頃、知人がたまたま前を通りかかったら建物の前に人が群がっていたので、「意外と流行っているじゃないか」と感心したら、テナントに入っている中華料理店の客だったそうだ。私はまだ新人のペーペーだったけれども、「何という無謀な寄席経営に乗り出されたものだ」と、開館当初から気の毒にすら思っていた。それはそうだ、その頃は今のように落語会に元気があったわけではないし、マンモスターミナルである新宿や池袋の交通至便の寄席ですら集客に悩んでいるような状況で、結果は目に見えていたはずだけれども、案の定というか当然というか、数年で幕を閉じてしまった。噂では、いまだに寄席の看板だけはあるという。

     江東区と言えば「若竹」という認識しかない私は、さてどんな名物があるのかと期待に胸を膨らませて待ち合わせ場所に赴いた。「江東区はまかしてください」と言わんばかりの、自信満々な面持ちで現れた担当者K君が連れて行ってくれたのが、砂町銀座という商店街だった。日本各地で、巨大ショッピングセンターに押されてシャッター通りが増えている中、こちらはこの辺りに生活している人でなくても来たがる希有な商店街なのだと言う。なぜ「砂町」という地名なのかというと、元々寄り洲で砂がたくさんあったから、というわけではなく、「砂村新四郎」というひとが開発した地域だからだそうだ。
    じゃあ「砂村町」で良いじゃないか!そして、なぜ「銀座」なのかというと、昭和7年に東京市会議員の宇田川さんという人が「この通りが銀座に負けないような一大繁華街となられんことを」と祝辞を垂れたことから決まったとか。あやかっちゃだめじゃん!負けちゃうじゃん!しかし、なかなかの活況のようだ。今回の江東区は、この商店街を往復するだけだと宣言されてしまった。いつもは小旅行のようにいくつかの名所を回るのだが、今回はこの商店街とその周囲のみ。どれだけ自信を持っているのか。さあ、歩いてみようではないか。
    砂町銀座を徘徊します 砂町銀座を徘徊します

    まずは、なぎら健壱に変身する松尾編集長
     入り口辺りの道端に、茶色く錆びて朽ちかけている注意書きの看板がある。読みにくいが、「自転車放置禁止」とある。しかし、この看板の放置から改めて欲しいと感じるのは私だけだろうか。
     さすがに下町だ、生活感のある風情に好感が持てる。一人のおばさんが、自転車で駆け抜けようとする若者に沢穂希選手のよ
    うにささささっと近寄り、「だめよ、自転車降りてねー!」と声をかけている。当たり前のようで、都心部では見られない光景だ。新宿辺り でそんな声をかけたら、刺されてしまうかもしれない。いや、それはどこでも同じなのだけれども、声をかけて注意するという感じは、こういった街でないとなかなか成立しないのだ。
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    (水曜日)

     その注意おばさんのおすすめで、「地鶏の店鳥光」で焼き鳥を買い食いすることにした。「焼き味天下一」とある。やはり商店街を歩けば買い食いだ。醍醐味だ。この瞬間から、私はなぎら健壱になった。商店の皆さんと丁々発止のやり取りを楽しみながら、下町情緒にどっぷり浸かるぞ。 問題は、私の意識は完全にそうだが、周りからはそう見えないということだ。さて、焼き鳥は裏切らない。想像通りの美味さで、驚くことは何もないのだけれども、安心感のある商店街の焼き鳥だ。ああ、コップ酒が飲みたい。
     次は惣菜屋さんだ。「松ばや」という店名だ。「ばや」は何だろう。「松葉家」なのか、「松早」なのか、それともお松さんという婆やのことか。そんなわけはないだろう。店先の白いバットの中に、巨大な納豆がひしめいているように見えたが、味付け玉子だった。 焼き鳥を買い食いし、なぎら健壱に変身

    気分は、なぎら健壱で焼き鳥を食す

    「煮玉子の店ココだよ!松ばや」と書かれている。きっと名物なのだろう。5個で210円だ。安いが、どうしよう。食い切れないぞ。
     買い食いはできないけれど、「まからんや」は頼もしい。これ以上一銭もまからない決意が店名になった。最初から原価ぎりぎりでやっているから、値札通りで願いますということか。店名にしているくらいだから、よほど「まけろ」と言ってくる客が多いのだろう。地域の小中学校に通う子供たち用の「体育着」や「通学帽子」が扱われているようだ。定休日だから雰囲気が見られなかったが、生徒たちが「ねえ、帽子まけてよー」「体育着、もう少し何とかなんない?」と値切っているのだろうか。




    煮玉子も買い食いする、なぎら健壱

    ひしめく煮玉子

    頼もしいお店

    「旧キング」も気になります

    松尾編集長の徘徊は続く…
     メンズショップ「ニューキング」も頼もしいが、「旧キング」はどうだったのかが気になるところ。リビングショップ「ビックリヤ」はどうびっくりさせてくれるのか路地を入って覗きに行ったが、休みだった。ある店先が、紅白の垂れ幕が妙にめでたそうなので近寄ると、「完全閉店店じまい」と書かれた店だった。閉店の上に店じまいだ。「のこりあと3日です」とあるが、この日は閉まっていた。あと2日じゃないか!どうか、発展的な店じまいであってほしい。

    楽しいパンが目白押し

     ペットショップ「ペットエコDPO」の前にジョンとボビーが放し飼いになっていたので撫でてやった。繋がれていないのに忠犬ハチ公のように大人しいと思ったら、リアルな置物だった。エコだなあ。「フレッシュベーカリー・モンシェリ」は、「トトロパン」や「まっくろくろすけ」、「アンパンマン」あんぱん、「ドラエモン(ママ)」など、斬新なデザインのパンが目白押しだ。子供たちを大切にしている店なのだろう、親がパンを買っている間に子供たちが遊べるよう、キッズサークルで囲われた遊び場があった。その名 も「びば!!あそびば」だ。韻を踏んでいる。

    びば!!あそびば

    残念お休みでした

    ジョンとボビーは仲良し

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    洋食のグルメ!?で絶品洋食ランチ
     パンの香りを嗅いでいると昼飯時になった。またK君が得意げに、「任せなさい」顔を している。私達を彼が誘ったのは、「グルメ」という画期的な名前の洋食屋さんだった。
    ランチの写真をパチリ編集長
    ランチの写真をパチリ編集長

    グルメのみなさんと記念撮影
    グルメのみなさんと記念撮影

     少々寒いが、テラスでハンバーグをいただくことにした。路地を挟んで向かいの民家を眺めながらの絶品洋食はおすすめだ。振り返れば調理をしているマスター(坊屋三郎さん似)とおかみさんの、てきぱきかつ丁寧な仕事ぶりも拝見できた。
     酒店の「伊勢信」にふらりと入る。なかなかの品揃え、また良い酒を置いている。最初にここへ来て、飲みながらうろうろすれば良かったと一瞬思ったが、それでは風紀が乱れると反省。いややっていないのだから反省するべきなのか。店の方にうかがえば、こちらの大将がこの商店会の副理事長さんだそうだ。すぐ向かいの二階に事務所があるとか。へえー、と向かいの窓を見上げれば、その副理事長沼田さんと目が合ってしまった。これは行かねばなるまい。今日の私はなぎら健壱なのだ。 沼田さんとしばし景気回復についての意見を交換
    沼田さんとしばし景気回復についての意見を交換

    なかなかの品揃えの伊勢信酒店
    なかなかの品揃えの伊勢信酒店

     大きな全店舗の案内図の上に、「人々の活気と情緒溢れる粋なショッピングストリト、砂町銀座商店街」というキャッチフレーズが掲げられている。沼田さん、なかなかに押しの強そうな風貌で、いかにもリーダーシップがありそう。この商店街を牽引していらっしゃるのだなあ、という雰囲気が前面に出ていて、これまた頼もしい。デフレ脱却や景気回復についてのご意見を機関銃のように話してくださり、話術に感服。もちろん、景気が一番敏感に反映される現場にいらっしゃる方のお話、リアリティと説得力があった。余談だけれど、家に帰ってからテレビを観ていたら、沼田さん、景気回復についてニュース番組のインタビューを受けておられた。知る人ぞ知る有名人なのだ。

    お次は永六輔に変身する松尾編集長
     横道に逸れると、下町の風情が感じられて小旅行気分。知らない角を一つ曲がると、それはもう旅の始まりです。永六輔です。ブロック塀が縦に切断されて、古いアパートの入り口になっている。切断されたことは、塀に直接書かれている「駐車お断り」の文字のレイアウトでわかる。なぜこの位置で切ったのか。ブロックの切りの良い所ではなく、わざわざ途中を建てに割いている。冷蔵庫が通らなかったのだろうか……。
     亀高神社発見。いや、全然知らないのだが。階段に、「参詣人のため邪魔をしないで下さい立入禁止」との表示が。「参詣人のため」という表現が不思議だ。「参詣の邪魔をしないで下さい」でも良さそうだが。しかし、立入禁止では参詣し難くないか心配だ。敷地内に、巨大な口紅の先のようなものが地面から突き出ていて、何だろうかと思い近寄ってみたら、忠魂碑だそう。
    砲弾を仕様した忠魂碑
    砲弾を仕様した忠魂碑

    亀高神社
    亀高神社






    なぜ?こんな所でブロックを切断したのか…
    なぜ?こんな所でブロックを切断したのか…

    本日のお参り@亀高神社
    本日のお参り@亀高神社

  • 2013年
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    01月23日
    (水曜日)

     電信柱の、私の腰の高さぐらいに、青い子供用のサンダルが結びつけてある。きっと道に落ちていたのだが、警察に届けるようなことでもないだろうが、さりとて子供は成長するので予備を揃えている確率も低い、さぞや困っているだろうけれども、ご近所の子供の いる家を訪ねて回るのもどうだろう、道に放置していればそのままゴミとして片付けられてしまう、これはひとつ地面より高い所にキープしておこう。「まだ必要としている人がいるはずです、持って行かないで、持ち主の坊ちゃんかその親御さん、どうか見つけてく ださいね」という葛藤、想いが、この現象となっているのだろう。下町の下町たる所を垣間見たような気がする。
     生活用品の店や飲食店が多いこの辺りには珍しく、町工場を発見。看板には丸ゴシック体で大きく「ヤマト酸素」とある。それ以外の情報はない。木でできたガラス戸を覗いてみると、80歳ぐらいの職人さんが、細い管を何かしていらっしゃる。私達が作業を覗き込んでいると、間もなくシャッターを閉められてしまった。邪魔してすみません。



    双子の豚ギャングがキャラクターになっている「パブスペースジェミニ」が気になる。営業時間ではないようだ。豚のイラストに「ふたご座」と記されているが、ママさんの座なのか、太った二人のママがいるのか、両方該当しているのか。 下町の下町たる所似であるとおもわれる現象
    下町の下町たる所似であるとおもわれる現象 気になるママの姿は!?
    気になるママの姿は!?

    商店街を散策
    商店街を散策

    あ?今日も満喫、松尾編集長
    あ?今日も満喫、松尾編集長

    スポット情報

    ●地鶏の店 鳥光
     江東区北砂3-38-14
     TEL 03-3646-7660

    ●食品・惣菜 松ばや
     江東区北砂4-7-19
     TEL 03-3646-2551

    ●焼きたてパン モン・シェリー
     江東区北砂4-18-14
     TEL 03-5690-5102

    ●洋食のグルメ
     江東区北砂4-18-20
     TEL 03-3644-6225

    ●伊勢信酒店
     江東区北砂3-38-13
     TEL 03-3644-2004

    ●亀高神社
     江東区北砂4-25

    ●お茶の君野園
     江東区北砂4-38-8

     TEL 03-3644-8801


    これにて本日の徘徊終了~!!
    これにて本日の徘徊終了~!!

    宝くじが当たるかもしれない!!編集長!?
    開運宝箱「宝くじ受け」
     
     商店街に戻り、「お茶の君野園」へ。開運宝箱「宝くじ受け」なるものを見つけた。神棚のような質感で、宝くじを建てておけるホルダーがついている。私はジャンボを買っていたのだ。宝くじ受けは購入しなかったが、ここで手を合わせておいたのできっと6億円当たっている。私だけ景気が良くなってすみません。

    ファッションチェックに余念がない編集長
    ファッションチェックに余念がない編集長
    さて、私はどこに行っても時間さえあれば105円均一の店をパトロールすることにして いる。この砂町銀座にも複数の「百均」があったので潜入してみた。

    威勢のいい客「体洗うスポンジはどこ!?」
    店員「そちらの棚の反対側に……」
    客「あああ、あったあった!」
    店員「あ、そっちじゃなくって」
    客「これでいいよ!」
    店員「それは食器洗うスポンジです」
    客「いいよいいよ、同じだから!」
    店員「同じじゃないですぅ……」

    という素敵な会話を耳にして、満足して退出した。

    やっぱり下町は良いなあ。以上、なぎら健壱でした(嘘)。
    編集長松尾貴史
    松尾貴史

     1960年神戸市生まれ。大阪芸術大学デザイン学科卒業後、研究室勤務のかたわら、ナレーターとしてデビュー。テレビ、ラジオ、映画、舞台、エッセイ、イラスト、カレー店など、分野にこだわらず活動。著書に「接客主義」「ネタになる統計データ」など。最新刊は「なぜ宇宙人は地球に来ない?笑う超常現象入門」を編み直した「超常現象・都市伝説」(PHP研究所)。