• 2013年
    (平成25年)
    03月01日
    (金曜日)


    品川区編

    ホンモノの東京新聞はこちらから


    本日の編集長(とんかつ丸八にて) 本日の編集長(とんかつ丸八にて)  品川と言えば、落語の「品川心中」だ。聴いていると状況をイメージし難いのは、今の東京湾岸の様相と、その昔は遠浅の浜だったからこその描写に違和感があるからだろう。
     品川と言えば、品川駅。大きなターミナル駅で、新幹線ともつながっている。当然、品川の取材はここからだろうと思っていたら、品川駅は東京都港区にあるのだった。しながわかった!いや、知らなかった!知っていたが駄洒落が書きたかっただけだ。何だ品川区、さびしいじゃないかと思ったら、目黒駅は目黒区ではなく品川区にあった。東京ディズニーランドや新東京国際空港は千葉県だから、品川と港区、目黒と品川区ぐらいの誤差は可愛いものだ。何が可愛いのかはわからないが

     品川と言えば、「江戸前」だ。江戸前という言葉は、そもそも品川の前辺りで獲れた魚を指したものだ。転じて、江戸っ子の気っ風の良さや鯔背なスタイルを「江戸前」と呼ぶようになった。大阪に近鉄の「布施」という駅があって、駅前に「江戸前寿司」と看板が出ている。大阪で「江戸前」って。しかし、江戸っ子が流れて来て店をやっているのかもしれない。きっと江戸っ子気質で、てやんでいでべらぼうめ、な感じでやっているのかと思えば、その下に大きく「てっちり」と書いてある。どこが江戸前やねん。
     へんてこなことを思い出してしまった。品川である。
    担当のK君が「大井町」で待ち合わせようというので検索したら、神奈川県の南西部が出て来たではないか。大井町という自治体はないのだ。大井町線の大井町駅ということだったのだ。大井町駅も大井町にはないのか。品川区大井一丁目だ。大井町一丁目で良いじゃないか!なぜ一文字程度を略すのだ。名古屋の人は「なごやえきまで」というところを「めいえきまで」と言うが、なぜたった一音節省略するのかと疑問に思う。あ、また話が遠方に飛んでしまう。大井町だ。昔は「東京府荏原郡大井町」といったそうだ。その後、大井町全域が「東京市品川区」になったとか。
    本日は日本ペイント見学から 本日は日本ペイント見学から

    ポケットハンドは禁止!ゼロ災害ヨシ!
     さあ、この界隈には何があるのだろう。「明治記念館から見ましょう」と言われたので、「またそんなことを、あれは港区の元赤坂にある結婚式場ではないか」と問う私を、薄笑いを浮かべたK君が連れて行ったのは「日ペ」だった。「ニッペ」、つまり「日本ペイント」だ。
    歴史に詳しいと思われる係の方が案内して下さるというのでまずは記念撮影。

    日本ペイント 明治記念館前にて 日本ペイント 明治記念館前にて

    もちろん、日ペなので、かとちゃんのポーズだ。明治時代にこの地で塗料の工場ができて、その時の煉瓦造りの工場跡が今は博物館のような展示施設になっている。名付けて「明治記念館」だ。なるほど、昔塗料を作るのに使われていた骨董品的器材と解説が展示されている。 ふと、展示の解説に出てくる「ペンキ」という言葉が何語なのか非常に気になったので、係の方に聞いてみたら、「考えたこともないですね」と放置されてしまった。でも、その他のことには驚くほど深く教えて下さったので大きな感謝。 この旧工場は品川区内の洋式建物として最も古いもので、品川教育委員会の保存要請に応えたものだ。社会貢献なのだ。なるほど、さすがは歴史ある品川が本社の日本ペイント、と思ったら、本社か大阪にあるそうだ。失礼しました。「ここにあると思ったら実はあっちだった」というのが今回のテーマなのだろうか。
    日本ペイント三田さんより説明を受ける。 日本ペイント三田さんより説明を受ける

    ルンルンでスキップ ルンルンでスキップ

  • 2013年
    (平成25年)
    03月01日
    (金曜日)

     さあ、明治は遠くなりにけり、最新の塗料の世界を垣間見るぞ!と敷地内を歩いていると、広い通路に「いきいき大通り」という立て札が。「わかさ通り」「壮快街道」「夢小路」「散歩の達人筋」などもあるかと探したが見つからなかった。ともあれ、いきいきと歩いてみたがどうか。「事業所構内はポケットハンド禁止」という注意書きもあった。ポケットハンドという道具を禁止しているようなニュアンスに感じるが、単に風紀上ポケットから手を出そうというもの。宅八郎氏が使っていたのはマジックハンドなのでお間違えのないように。「本日は残業なしデーです」という注意書きは「本日は残業なレデーです」に見えたし、「ルールを守ってゼロ災害ヨシ!」は「ゼロ災害」という災害があるのかと気にしてはみたが、幸い誰にも気づかれなかった。 立派な胸像
     一番ありそうな「ペンキ塗りたて」の注意書きが私の知る限りどこにも見当たらなかったことだけは、ここに報告しておく。
     途中、立派な胸像が二つ並んでいたので、「どっちが突っ込みですか?」と聞いてみたが、やはり放置された。真ん中にマイクスタンドを立てたい衝動を抑え、比較的近代的な社屋の4階へ。ここはショールームらしい。しかし、通常は見学できないような感じの注意書きがあった。そのわりには「どうかよく見て!」という雰囲気の痒いところに手の届く展示群が並んでいる。解体された余部鉄橋の部分があったり、塗るだけで断熱効果のある最新型の化学的な塗料のデモンストレーション、見る方向によって色の変わる玉虫のような塗装技術、落書きや汚れを簡単に落とせるペイントなど、楽しい発明がそこかしこに広がっている。
    様々な塗装に感激する

    うなぎ塗料

    暑ないん?

     「うなぎ塗料」というものがあって、やはり漁船などに使うのかと思ったら、正解だった。ところが、ウナギ漁に使うという意味ではなく、フジツボが付き難い塗料なのだとか。塗られた表面がヌルヌルになるからだという。それで「うなぎ塗料」なのだ。なかなかのネーミングではないか。「蒲焼きの香料をつけると売り上げが上がるかも」と一応提案したが、聞こえていないふりをされた。当然のことである。

    日本の地名なのにゼームス坂ってなんだ!?
     別れを惜しんで、敷地の外へ出た。大井町駅までそぞろ歩いてみよう。カフェ・グリルの店先に、食品サンプルが並んでいる。台東区編で最先端の食品サンプルをいろいろと見て目が肥えてしまったからか、どう見ても逆効果としか思えない代物が並んでいることにペーソスを感じた。ドアには、のっぴきならない状況が押し寄せたようで、「都合によりしばらく休業します 店主」という走り書きが貼られていた。
      レンガの向こうに墓石や卒塔婆が見えるという風流を左肩に感じながらズズイと進むと、ずんぐりとしたロケットの傍に宇宙飛行士が二人の奇妙なディスプレイを発見。墜落しなければよいが。それはディスプレイではなく、オスプレイだ。
    風流を感じる景色

    ナイスディスプレイ

    宇宙飛行士

    ペーソスを感じる食品サンプル

  • 2013年
    (平成25年)
    03月01日
    (金曜日)

    「ゼームス坂通り会」の灯籠
    「ゼームス坂通り会」の灯籠

    ゼームス坂を登る
    ゼームス坂を登る

     紅白の提灯に「ゼームス坂通り会」と書かれている。「ゼームス坂会」でないところを見ると、ゼームス坂に隣接している商店街なのだろうか。その前に、ゼームスだ。日本の地名なのに、ゼームス坂ってなんだ。聞いたことはあったが、ここだったのか。上ってみよう、あるいは下ってみよう。ここは元々、「浅間坂(せんげんざか)」と呼ばれていたが、坂本龍馬の海援隊を支援していた商人ジョン・M・ジェームスの家がここにあったことで、この呼び名が定着したらしい。そう言えば、私の故郷・神戸にも、「ジェームス山」という高台がある。こちらは貿易商のアーネスト・ウィリアムス・ジェームスが宅地開発したのでこの名前になったというが、なぜジェームスの名は日本の地名になるのだろうか。ジョーンズ町とか、トーマス浜とか、ワトソン谷とか、マディソン郡とか、他の人名もあってもよかろうに、なぜジェームスだけが名を残すのか。
    高村光太郎と智恵子の碑の前で詩を朗読すると
    高村光太郎と智恵子の碑の前で詩を朗読すると

     日本民謡会館発見。民謡の館だから、さぞや自由な和気藹々の施設だろうと訪ねようと思ったが、関係者以外立入禁止だったので退散。高村光太郎と智恵子の記念碑の前で、お供えのレモンの黄色の鮮やかさに涙して、大井町駅の脇にある、とんかつの「丸八」へ。
    そして舞台はとんかつ丸八へ!
    とんかつ丸八
    とんかつ丸八

    ヒレにしようか、ロースにしようか。やはり揚げ物の店なら、最初はいろんな種類が食べられるミックス定食が良かろうとお願いした。明るいおかみさんが、「ちょっとビールでもどうですか?」とすすめて下さる。待っている間にそれもありなのだろうけれども、ビールなんてこんな明るい時間から頂くわけには、いやいや、ですか?ですね、それでは一本。あ、あと二本お願いします。ある程度ビールで腹が膨れたところへ出て来たのが、大ぶりの丸い皿にやっ

    ボリューム満点
    ボリューム満点

    とこさ乗り切ったミンチカツ、イカフライ、海老フライ、ヒレカツ。ミンチとヒレはそれぞれ別のソースがかかっている。旨い!ご飯はおかわり自由です。そりゃあ、このおかずの量に釣り合うようにおかわりしながら食べて戴いて喰らったら、久しぶりに動けなくなってしまった。十代じゃないのだから。昭和も遠くなりにけり。店主夫妻の快活なお人柄に馴染んでしまい、ついつい長居をしてしまった。

    飲屋街を散策する

    丸八のお父さんとお母さん
    丸八のお父さんとお母さん

    トラトラ
    トラトラ

     2、3年ほど前、「丸八」の並びの画廊スペースでやっていた美術グループ展を見に来た帰りに食べて旨かったカレー店「トラトラカレー」を発見。懐かしい雰囲気の、昔新橋にあった「スマトラカレー」に似た味だった、食べたいという欲求はあるものの、すでに腹十二分目、素通りに。しかし、大井町駅の周辺にはなかなか味わいのある裏路地の飲屋街が延びている。ここに住まなくてよかった、毎日回遊してしまいそうだ。
  • 2013年
    (平成25年)
    03月01日
    (金曜日)

    あ、これは居酒屋風の風俗か、と思ったら、風俗風の居酒屋だった。看板だけだが。気になったのはスナック「ホー珍」だ。スナックだが、中華。チャイナドレスで接客されるのだろうか。気にはなったが食指を動かされたわけではないことを明記しておく。「ちゃぶっとりあ」という店名もなかなか洒脱だ。「ちゃぶ台」と「トラットリア」をあわせた合成語だろう。一度だけ行ってみたい。まだ腹十一分目だ。

     マンションの一階、密やかに店がある。知的な感じのご主人が両手に治療あるいは保護のためであろう白い布を着けておられる。万年筆の専門店だそうだ。ユーザーそれぞれの好みや手の癖が違うので、それに合わせた調整をされているのだが、「研ぐ」作業に集中して時間と神経と骨をすり減らしてしまい、顧客とのバランスを維持するため最小限の仕事しかなさらないとか。いたずらに宣伝をしてはご迷惑なので、これくらいの内容にしておくが、こういう貴重な矜持を持っておられる職人に後継者がいないことを残念に思う。効率優先の世の中の流れは止められないのだろうか。

    編集長も試し書き
    編集長も試し書き

    看板をチェック
    看板をチェック

    ホー珍
    ホー珍

      ちゃぶっとりあ
    ちゃぶっとりあ

    万年筆専門店フルハンターの森山さん
    万年筆専門店フルハンターの森山さん

    スポット情報


    ●日本ペイント/明治記念館

     品川区南品川4-1-15 日本ペイント東京事業所内
     TEL 03-3740-1110


    ●ゼームス坂

     品川区南品川5丁目と6丁目の間あたり


    ●高村智恵子記念碑/レモン哀歌の碑

     品川区南品川6-7-30


    ●とんかつ丸八

     品川区南品川6-11-28
     TEL 03-3471-5689


    ●フルハンター(万年筆専門店)

     品川区東大井5-26-20-102
     TEL 03-3471-7378


    ●上神明天祖神社

     品川区二葉4-4-12
     TEL 03-3782-1711



    上神明天祖神社に到着
    上神明天祖神社に到着


    白蛇の集団に囲まれる編集長!!
     品川区二葉にある「上神明天祖神社」にふらりと。とにかく、白い蛇が厳島弁財天にまとわりついている。その数、七体。あまりの白さに、まるで塗ったかのような感じがしてしまう。で、やはり塗ってあった。日ペの塗料だろうか。「うなぎ塗料」でないことは確かだろう。リアリズムで造形していないところがまた嬉しいではないか。神の使いであるにも関わらず、このすきだらけの表情には親しみを禁じ得ない。そして、蛇は縁起が良いのだ。お稲荷さんの使いが狐であることと同じで、五穀豊穣、せっかくできた米を食い散らかす鼠をやっつけてくれる有り難い存在が狐であり、蛇なのだ。おまけに蛇は脱皮をする。毎度生まれ変わり、長寿のイメージがあるという。見た目も長い。縁起の良い動物なのに、キリスト教文化では憎まれ役になっている。この辺りのイメージの違いは面白い。
     私達が境内でうろうろしているところへ出て来られたのは、ちょうど留守をされている禰宜の奥方で、代わりに案内して下さるという。 清楚で知的かつ神秘的な美人。
     まあ上がってお茶でもいかが、と言われ、普通なら「お構いなく」と言ってしまうところだが、なぜか全員「じゃあせっかくですので」と上がり込んでしまった。立派な雛人形の段飾りを賞でながら、旨いお茶を頂きつつ世間話に。
    「松尾さんとは昔銀座のディスコでお目にかかりました」と突然切り出され、狼狽。しかし何も危害を加えることはなかったと聞いて安心したが、安心などする必要はないのだ。
    そもそも身に覚えがないのだから。はは、は。
    白蛇?。
    白蛇?

    白蛇がまとわりついている
    白蛇がまとわりついている

    立派な雛人形の段飾りを拝見
    立派な雛人形の段飾りを拝見


    編集長松尾貴史
    松尾貴史

     1960年神戸市生まれ。大阪芸術大学デザイン学科卒業後、研究室勤務のかたわら、ナレーターとしてデビュー。テレビ、ラジオ、映画、舞台、エッセイ、イラスト、カレー店など、分野にこだわらず活動。著書に「接客主義」「ネタになる統計データ」など。最新刊は「なぜ宇宙人は地球に来ない?笑う超常現象入門」を編み直した「超常現象・都市伝説」(PHP研究所)。