駅から権之助坂を下り、緑が映える目黒川と山手通りを越えた先は、インテリアショップが集まる通称インテリアストリートだ。北欧やアメリカの家具が通りを彩るなか、古い木造家屋にモダンな家具を並べるMEISTERのちょうちんづくりをいかしたランプシェードなど日本のデザインが、街に落ち着いた雰囲気を醸し出している。
「古いモノがあると、時間がゆっくりになるんですよね」。maruseの黒川洋行さんは、再生ガラス独特の素材感を味わいにした沖縄などの作家の器や、日本の手仕事の美しさを感じる道具、懐かしい生活道具も丁寧にアカを落として、今の暮らしにいかす提案をしている。
元禄時代に松雲禅師が彫った305体の羅漢像は、この地で復活した。当初は536体。寄進者には5代将軍綱吉の母、桂昌院をはじめ浅野内匠頭や遊女の名もある。本所に寺が建ち、参拝者でにぎわう様子は浮世絵にも描かれた。しかし明治以降は衰退。移転後、保存修復が始まったのは昭和50年代からという。
五百羅漢寺のお堂に居並ぶ羅漢さんは一体一体名も表情も異なり、語りかけてくるようだ。穏やかなお顔から「ありがたい」という声が聞こえたような気がした。(武居智子)
2012年8月25日(土曜日)掲載分
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