湯島(ゆしま)(文京区)
◆東京メトロ千代田線湯島駅下車
湯島はかつて花柳界として栄えた。干物の老舗・丸赤商店の社長中村充さんは「昔は料亭がたくさんあり、うちの干物はお土産に使われたものです」と言う。店の裏手には芸者さんが化粧して出てくることからお化け横丁と呼ばれた路地も。
今は料亭は激減、街にはネオン看板が乱立する。それでも一歩路地に入れば静寂に包まれる。中村さんは湯島白梅商店会会長として「下町でありながら山の手の雰囲気も併せ持つ湯島の良さを残したい」と願う。
湯島天神横の切通坂を上り、和菓子の壺屋総本店へ。つぼの形のもなかは全国にファンがいる。古い店内には「当時は家が1軒買えるほど高価だった」という 大正時代のレジや勝海舟直筆の書が飾られている。神田明神まで歩き、甘酒の天野屋で一休み。地下のこうじ室で発酵させた米こうじから造られる甘酒は、とろ けるようなおいしさだ。関東ローム層の土が米こうじの湿度と温度を絶妙に調節してくれるのだという。「バブル以降、周りはビルばかりになったけれど、店先 からの眺めはずっと変わらないよ」と社長の天野亀太郎さん。目の前の湯島聖堂の木々の葉をさわやかな風が揺らしていた。(池沢なつ)
2009年4月18日(土曜日)掲載分
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