達人が語る魅力とは?

舌もしびれる激辛料理や、鼻をつく刺激臭の発酵食品がブームだ。未知の味覚に果敢に挑む醍醐味(だいごみ)がたまらないらしい。美容や健康によいとされ(食べ過ぎには注意!)、インスタ映えも人気を集める理由の一つ。 一度食べたら忘れられない「Special(特別)」で「Sensational(人を引きつける)」な「ドSグルメ」の魅力を、2人の達人に語ってもらった。

“発酵”の達人

小泉武夫さん
小泉武夫

(こいずみ たけお)

微生物の増殖などで食材を変化させた発酵食品に詳しい。「くさいはうまい」「納豆の快楽」など著書は100冊を超える。専門は醸造学、発酵学、食文化論。東京農業大名誉教授。琉球大などで客員教授も務める。福島県出身。
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におい人間の原点
 十カ月ぶりに冷蔵庫をきれいにしたら、カリカリになった納豆が出てきました。「しめた」とすり鉢でつぶすと粉納豆になりました。トルコでは百七十年前のヤギのチーズに出合いました。和歌山県の新宮にはサンマのなれ寿司(ずし)の三十年もの。もうペースト状になってて、ヨーグルトです。  発酵すると腐らないんですよ。菌が、他の腐らせる菌を寄せ付けない物質を作る。栄養価値も高まるし、なにより独特の味とにおいです。今までで一番くさかったのは北欧の塩漬けニシンの缶詰「シュールストレミング」か、エイの切り身を発酵させた韓国の「ホンオフェ」。アンモニアのにおいで、ひっくり返りました。涙にむせびます。鼻にも来ます。でも人間は、腐ったものを食べたら死ぬけど、発酵食品は大丈夫と本能的に知っている。風呂に入らないと汗臭くなるでしょう? 人間の周りに付いていたにおいは、長い間に自然に記憶している。発酵のにおいは人間の原点なんです。  朝食のパンは酵母で発酵します。サラダのドレッシングも酢で発酵ですよね。ヨーグルトもチーズも発酵。和食だってみそや漬物、しょうゆがそう。発酵食品は、生活のとても身近なところにあるのです。

天日干しされるムロアジを前にくさやの魅力を語る藤井敏夫さん=東京都大島町で

「臭さ」にゾッコン
300年の伝統…くさや作り拝見 大島  小泉さんは一番好きな発酵食品に「くさや」を挙げる。伊豆諸島の大島や新島、八丈島などが産地の魚の干物で、その「臭さ」が名前の由来とされる。大島の「くさや藤文(ふじぶん)商店」で作り方を見せてもらった。  「一番大事な仕事は、先祖代々受け継いできたくさや汁の管理です」。五代目店主の藤井敏夫さん(68)が話す。300年来、つぎ足しながら使い続けてきたという汁に、ムロアジやトビウオを漬けて発酵させる。くさやづくりは朝、魚の内臓などを手で取り除く作業から始まる。水洗いした魚を翌朝までくさや汁に漬ける汁から出した魚を再び水洗いし、気温が15~16度までの日は天日で、暖かい時期は乾燥室で干す。洗い落としたくさや菌を含む水は、くさや汁に戻す。  くさや汁が生まれたのは江戸時代。幕府の塩の取り立てが厳しく、水も貴重で、干物づくりに同じ塩水を何度も使ううち、魚からくさや菌が発生した。「魚を一度漬けた汁は24~30時間休ませないと発酵が進まず、うま味が出ない」と藤井さん。このため汁は二つの地下槽で保管し、交互に使っている。が、夜に汁を棒でかきまぜることが重要。まんべんなく汁に浸すと、うま味の強いくさやになる。

“激辛”の達人

鈴木亜美さん
鈴木亜美

(すずき あみ)

1998年歌手デビュー。2006年に映画に初出演し女優としても活動する。16年に結婚。料理が趣味で、「激辛女王」の異名も。食に詳しい「フードアナリスト」2級の資格を持つ。神奈川県出身。
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「しびれ」ブーム
 きっかけは小学5年生の頃、即席ラーメンの味に飽きて試しに入れた 豆板醤(トウバンジャン)でした。すごくコクが出て。他にもニンニクやショウガを加えたらより深くなって、「辛いっておいしいんだ」と気付きました。  それから唐辛子やタバスコをいろいろな料理にかけることが増えて、もっと辛いもの、もっと辛いものとエスカレートしていって。いまはピザならタバスコ一本、みそ汁には一味唐辛子を一本使いたいですね。みそ汁は液体ではなくて、どろどろの一味を食べる感覚。お店では悪いので半分にしますけど(笑)。  最近のブームは「辛い」に加えて「しびれ」です。中国の山椒(さんしょう)の「花椒(ホワジャオ)」という、しびれるのがありまして。フフフ。辛さって唇がはれる、ひりひりする「痛み」だけど、しびれは舌がマヒするような、電気が通ってだんだん味覚がなくなるような、そんな感じがたまらないんです。辛いものを食べると一気に毛穴が開いて、オイルマッサージやサウナに行くような感じで肌も快調。歌手ですけど、せき込んじゃったり、のどがやられたりもなくて、逆に鼻が通るというか。辛いものの話をしているだけでも、体が燃える感じがします。  苦手な人もいるけど、辛さ=痛みは慣れます。ひとかけ、ふたかけと少しずつ増やしてみてください。きっと楽しいですよ。
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鈴木亜美さんも苦戦したという激辛ラーメン(鈴木さんのインスタグラムより)

「ドS」なレストラン紹介します!


激辛料理や発酵食、人類の未来を支えるといわれる昆虫食など強烈な個性を放つ食の数々を、本紙は「ドSグルメ」と呼ぶことにします。今後は東京を中心に「ドS」なレストランを紹介していきます。

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