東京ほっとコラム



ある春の日

2018/10 場所、風景(23区エリア / 千代田区)

   ある春の日の午後、早目に用事が終えた私は有楽町で途中下車した。突然、桜田門に行きたくなったのだ。
  ビッグカメラを通り過ぎると、濠に向かってただひたすら、歩いた。 
  途中、歩いてきた駅方向に目をやると帝国劇場と旧GHQ本部の建物が、日比谷濠の水面に映り、陽の光にキラキラしていた。
  やがて、門が、右手に見えた。
 私は、バッグからスマホを取り出しビデオを回し始めた。
  1860年3月24日、大老井伊直弼が、暗殺された場所、桜田門外である。
   事件当日通りには、行列と暗殺者以外、大名行列を楽しむ見物客達もいた。
   事件の大混乱の中、薩摩藩の有村が大老の首級をあげた。
   私はボンヤリ、門を見ていた。
 すると、後ろから「お願い出来ますか?」とスマホを渡された。
  門の前で交代で記念写真を撮っていた50代位の3人組の女性達だった。
私は、快く引き受けた。

(埼玉県 金子 悦子)

小さな散歩道

2015/09 ショッピング、お店(23区エリア / 千代田区)

 私にとっての癒しの場である「散歩道」は、まさに東京のど真ん中にある。とはいえ、素晴らしい景色が堪能できるわけでも、心地よい風を感じることができるわけでもない。飯田橋駅の複合ビル「ラムラ」のことである。以前「ラムラとはイタリアかどこかの言葉で、散歩道という意味なのだ」と聞いたことがある。
 ラムラとの付き合いは古い。その辺りに親戚が住んでいることもあり、できたときからちょくちょく利用していた。店舗は1・2階のみだが、飲食、ファッション、スーパーなどあり、そのコンパクトな充実ぶりが気に入っている。気取らない雰囲気に誘われて、「ちょっと寄り道してみようかな」という感覚で足を踏み入れるのだ。同じくラムラを愛する姉とも、よくランチを楽しんでいる。
 そんな思いが通じたのか、この秋、職場が渋谷から飯田橋に引っ越すことに。これからは、寄り道ではなく日常的に散歩が楽しめそうで、妙にワクワクしている。

(東京都 山田光子)

永田町のオアシス

2013/12 場所、風景(23区エリア / 千代田区)

『国会前庭庭園』。最近まで永田町に勤めていた私がよく利用していた庭園だ。
国会議事堂に向かう道路の左側が和式庭園で、右側が洋式庭園。面積は約55,000平方m。このかなり広大な庭園は国有地で、実は衆議院が管理している。
和式庭園は木や池があちらこちらに配置されている。洋式庭園は広々とした道路が整備され、花壇には四季折々の花が咲き、木々はバランスよく配置されている。まさに、都会の中のオアシス的存在なのに、あまり人もこない。その上、入場無料だ。
さて、私のお気に入りだったのは洋式庭園。皇居の見えるベンチに座って、弁当を食べたり、昼寝をしたりした。10年以上も通ったので顔見知りもできた。会話を交わすわけではないが、会えばお互いに頭を下げる。転勤や退職などでだろうか。顔見知りのメンツは何度も入れ替わった。私もいなくなったが、誰かの記憶に残っているのだろうか?
ベンチだけは気付いてくれていると思う。

(神奈川県 本間 一孝)

イグナチオ教会の12

2013/11 場所、風景(23区エリア / 千代田区)

聖イグナチオ教会は、JR四ツ谷駅の目の前にあります。その大聖堂に入ると、外とは違う空気に包まれます。正面のキリスト像は来るものをやさしく迎えてくれます。
大きな楕円の壁には12本の柱と12枚のステンドグラスがあり、そこから来る光は神との語らいの場にふさわしい彩りを与えています。12という数字は、キリスト教では意味のある数字です。旧約聖書の始めに神が7日間で天地を創造したと書いてあります。そのため、7は聖なる数字と言われてきました。7を3と4に分解し、再び一つにすると12になります。12は、もう一つの聖なる数字なのです。
ユダがイエスを裏切ったので、12人だった使徒が11人になってしまいました。すると弟子たちは集まって、12人目を選びなおしています。つまり、使徒の数は12でなければならないのです。こんなことを意識しながらキリスト教の教会を訪ねてみるのも面白いのではないでしょうか。

(神奈川県 原田弘一)

電脳街の人情

2013/06 レジャー・観光、名所(23区エリア / 千代田区)

大学2年生の時に、勢い余って始めた秋葉原のメイド喫茶でのアルバイト。
メイド喫茶の人間関係はドロドロ、なんてコントを見ていたせいか、バイトを始めてすぐの頃は想像以上に温かく下町気質なアキバのメイド文化に拍子抜けした記憶がある。例えば、他店のメイドと外ですれ違った時は「お疲れ様でーす。」と声を掛け合う。中央通りを注意して歩くと、違う制服のメイド同士が挨拶を交わしながらすれ違って行くのが分かる。同じアキバで働く仲間意識がそうさせるのか、時にはフィギュアショップや居酒屋の店員までもが労いの言葉を掛け合う光景は、考えてみれば少し不思議な感じである。
アキバ系、メイド喫茶。ここ何年かで急激に浸透したとは言え、まだ少し受け入れがたいかもしれない。けれど、そこには人々の純粋な「好き」があり、ドラマもあり、他の文化と寸分違わず確かに血が通っているのである。秋葉原という街が、改めて気付かせてくれた。

(千葉県 福地 可南子)

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