メニュー

東京ほっとコラム



坂の町の文学館

2012/10 場所、風景(23区エリア / 新宿区)

西武新宿線中井駅の北口は坂道の多い閑静な住宅地である。一の坂にはじまり、新井薬師駅方面に向かって二の坂、三の坂・・・と八の坂まで続く。
四の坂は階段になっており、階段の一番下に一軒の落ち着いた佇まいの日本家屋がある。
これは「放浪記」の著書である林芙美子が生前に暮らした家で、今は「林芙美子記念館」となっている。
もみじやブナの木が植えられた広い庭に立つと、樹の葉のざわめきや小鳥のさえずりが聞こえ、木々の間を吹き抜ける風が心地よく、そこが新宿区であることを忘れてしまう。
戦前に建てられた京風数寄屋造りの建物は、屋根や柱、天井などの至るところに粋なこだわりが感じられる一方で、室内は無駄な装飾を一切そぎ落としたシンプルな作りで、暮らしやすさへの追求や日々の生活を大事にした様子がうかがえる。
この辺りには瀟洒な邸宅が多く立ち並んでいるので、記念館の帰りには坂の町をぶらぶら散策するのも楽しい。

(東京都 安藤裕美子)


このエントリーをはてなブックマークに追加
Check

文化の凝縮する街~新宿

2012/07 場所、風景(23区エリア / 新宿区)

新宿は様々な文化が凝縮する奥の深い街だ。映画「新宿鮫」が描くハードボイルドな街、日本を代表するデパート群、常に進化する国際色豊かなファッション・グルメ事情、二丁目・三丁目・歌舞伎町の醸し出す妖しい雰囲気・・。多くの顔を持つ新宿だが、私の新宿は紀伊國屋書店本店から始まる。
新宿に着くとまず紀伊國屋書店に向かう。上階から洋書・芸術書で気分をリセット。最後は2階の小説コーナーで今日の1冊を捜し求める。
本を手にして向かいのTSUTAYA新宿店に入る。この店ではDVDが監督別・国別に分かれていて、欧州の歴史ある賞を取った作品も容易に探すことができる。
TSUTAYAを後にするとスターバックスの席に身を沈め、珈琲を片手に今日の1冊をじっくりと読む。街を行き交う人々は老いも若きもエネルギッシュだ。
新宿は人を元気にする街。年を取っても新宿に立ち寄れるよう今からでも体を元気にしておきたいと思う。

(東京都 横山 正秀)


このエントリーをはてなブックマークに追加
Check

東京都庁展望室

2012/06 場所、風景(23区エリア / 新宿区)

病気で手術をし、仕事に復帰したばかりの頃、都庁に用事があり、立ち寄った。まだ本調子ではなく、その日は書類提出後は直帰してよいと言われていた。
ふと展望室に上がって見る気になった。45階、地上202メートル・・・一体どんな景色が見えるのだろう。無料と言うのも嬉しいではないか。専用のエレベーターで一気に上った。
晴天だったので素晴らしい眺望だった。東京タワー、国会議事堂、西の方には富士山も拝めた。
展望室には喫茶店やレストランもあった。それに従業員の方も大変親切だった。こんな素晴らしいところがあるなんて!
高いところに上ると本当に気分がすっきりする。病気のことや仕事のことをぐちぐち悩んでいた自分が小さな存在に思えてきた。
ふと周りを見回すと、観光客の方が多く、皆楽しそうに、くいいるように景色を眺めている。「今度は友人を誘って夜景を見に来よう」そう思ってエレベーターを下りた。

(東京都 菊川 真澄)


このエントリーをはてなブックマークに追加
Check

イケメン通りの老人ホーム

2012/06 場所、風景(23区エリア / 新宿区)

新大久保は、東京最大のコリアタウンであろう。中でも通称イケメン通りは、韓国の化粧品店や伝統の味がズラリひしめく、人気の界隈である。その中に、ひとつの老人ホームが建っている。“ルミエールふるさと”という、都市型軽費老人ホームである。行き交う観光客は、イケメン店員に気を取られ、この小さな施設に気付かないかもしれない。しかし、お年寄りたちは見ているのだ。玄関先で煙草を吸っていた車椅子の老女は「皆嬉しそうだねえ」と、感に堪えぬように言う。韓流ショップに夢中の女性客たちに、目を丸くする。少し前までは、老人ホームといえば郊外にあった。しかしここは、今までの暮らしの地続きにある。これも時代の要請だろう。また一人、老人が杖をつきながら出て来た。散歩だろうか、見送っているのは孫のように若い職員である。終の棲家を支えるのは、世代を超えた人と人との結びつきだ。軽佻浮薄な賑わいの中に、確かな錘を下そうとしている。

(千葉県 高崎志乃)


2012/07/18掲載


このエントリーをはてなブックマークに追加
Check

明治神宮野球場

2012/03 レジャー・観光、名所(23区エリア / 新宿区)

その昔、神宮球場の外野席が芝生だったことを覚えている人はどれくらいいるだろうか。初めて父親に連れられて行ったのは、ヤクルト−巨人戦だった。芝生に腰をおろし、ルールもわからないくせに握り飯を頬張りながら「アウトだ」「セーフだ」とか叫んでいた記憶がある。
この球場は、元々学生野球のために造られた。プロ野球と併用になっても、東京六大学の春秋のリーグ戦は、ここで開催される。近年観客は減ったが、いつも学生のほかにオールドファンの姿がある。応援に声をからす学生は四年で入れ替わるが、卒業しても足繁く通うOBがいる。
芝生の外野席はいつしか硬いシートに代わった。グラウンドは人口芝、電光スコアボードになり、フェンス広告の様子も変わった。
それでも、伝統という“縦糸”が途切れることなく紡がれている−この球場にはそんな雰囲気がある。

(東京都 中坪薫)


2012/04/18掲載


このエントリーをはてなブックマークに追加
Check

ページの先頭へ