東京ほっとコラム


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国立駅大学通りのパン屋さん

2014/05 場所、風景(その他のエリア / 国立市)

国立駅前からまっすぐ伸びる大学通りを15分ほど行ったところ、駅を背にして左側にそのパン屋さんはある。今から10年以上前、まだ学生だった私と夫は、よく大学から散歩がてら一緒にパンを買いに行った。一番お気に入りだったのは、バターがふんだんに使われた生地に、アーモンドと粉砂糖が掛けられているパンだ。名前は覚えていない。
店の前に置かれているベンチに座って一緒にパンを食べた。あれは確か3月の末だった。早春の陽気に誘われて、私たちはパン屋まで歩いた。二人ともまだ軽いコートを着ていた。並んで座ってパンを頬張りながら私たちは話した。
「今、この瞬間のことを、あの時は幸せだったねと思い出す日が来るかなぁ?」
4月から、彼は大学に残り私は就職することが決まっていた。
その後、私たちは結婚し子どもにも恵まれた。それでも時々、二人の間には不協和音が鳴る。そんな日に、二人並んでパンを食べたあの時のことを思い出す。

(神奈川県 坂本那香子)


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