今月の街先案内人

今回のゲストは俳優の宇梶剛士さん。俳優としてのキャリアはもちろんのこと、私生活においても数々の伝説をもつ宇梶さんが、幼少期から今まで住み続ける国立の街を紹介してくれました。

自分にとって国立は、まさに家の庭や玄関といった存在。

 国分寺と立川の間にあるから“国立”。
 もともと、大正の末期から昭和の初頭にかけて学園都市として開発された街であり、駅名としての“国立”が、後に地名として採用されました。そんな国立の街を紹介してくれる今回のゲストは俳優の宇梶剛士さんです。 「国立は、僕にとって多感な少年時代から今まで、ずっと親しんできた街。気持ち的には家の延長線上にあるんです。住んでいる家が寝室だとしたら、国立駅は家の玄関。大学通りは庭。それくらい、身近な存在です。」
 国立はその歴史的背景から、文教地区に指定されています。それゆえ、他のエリアとはちょっと雰囲気が違った街なのだそう。
「国立(こくりつ)の大学と音大の関係者が多く住み着いてできあがった街ですから、やっぱりインテリやアーティスティックな人が多いんです。
だからモノの考え方のなかにも“美”や“知”というものが常に近くにあるんだと思います。それが生活するなかでも、染み出しているのかも知れませんね。」  
 たしかに大学通りをはじめとして、駅周辺の街並は、どことなく気品が感じられます。
「元々の谷保に住まれていた人たちと、国立になってから移ってきた人たちでも、雰囲気が変わります。それらが融合して今の独特な雰囲気ができあがっているんです。」
 国立には今も宇梶さんの幼馴染みの方が多く暮らしているのだとか。
「だからますます居心地がいいんですよ。例えば、いろいろと上手く行かなくて心身共に疲れ果てていても、仲間がいると気持ちの切り替えがしやすい。僕にとって街が家だとしたら、街の人たちは家族ですから。」

人生の転機は、チャップリン作品との出会い。
人生の転機は、チャップリン作品との出会い。まるで高校野球児のようなまっすぐな視線で語る宇梶さん。いつまでもまっすぐに物事を見据えています。
俳優への第一歩は錦野亘さんの付き人から。
俳優への第一歩は錦野亘さんの付き人から。錦野さんは、とても気配りの人で、付き人に対しても気を使ってくれたのだそう。さすがスターですね。

目標を失いドロップアウトした果てに見つけた、もう一つの夢。

 プロ野球選手をめざし、本格的に野球に打ち込んでいた少年時代。野球推薦で高校へ進学し、厳しい練習に励んでいたものの、ある不祥事で、学校を退学。夢を失った宇梶さんは、徐々にすさんだ生活を送るようになり、遂には関東最大規模の暴走族の総長にまで。全盛期の傘下は2000人を越えていたといいます。しかし、ただケンカが強いだけでそれだけの人が従うわけがありません。今回、取材で初めてお会いしたときに感じたのは、一目で圧倒されてしまう宇梶さんのカリスマ性でした。不思議と“この人なら全てまかせて大丈夫”と思えてしまうような安心感があります。そんな宇梶さんにいわゆる“不良”を卒業し、役者へと転身したきっかけを伺いました。

「暴力沙汰で施設に収監されていたときに読んだ、チャップリンの自伝がきっかけですね。彼の生い立ちなんかにも共感できて、読み終わったら『これだ!俺もこうなりたいっ!』って。その後は名画座なんかを巡って、片っ端から彼の作品を観まくりました。チャップリンの作品は、まさに笑いあり、涙ありで、社会風刺も効いていますよね。さらに主演はもちろんのこと、監督も脚本もチャップリン本人。作曲だって行っています。当時は、単純にチャップリンのような演技で人を感動させる俳優になりたいと思ったんですけど、

今になってみると、脚本や演出も含めて、作品を作り出す姿に憧れていたんでしょうね。」
確かに現在の宇梶さんは、劇団を主催し、ご自分で脚本も書かれています。
「実は僕は書くことが大好きなんです。それと体育会系の気質なのか、同じスタッフと作品を作り上げることも好き。同じ経験を積み上げると、同じバックボーンを背負うわけですから、お互いにどのくらい成長したのか確かめ合えるし、次はどうしよう?というときに同じ方向が見えているとやりやすいでしょ? もちろん、映画やドラマのように、単発で演じる仕事も独特の緊張感があって楽しいと思いますよ。」
 こういった仲間意識の強さと、リーダーシップが宇梶さんのカリスマ性の源なのかもしれません。ちなみ


国立の駅付近を散歩中。
国立の駅付近を散歩中。「この文教地区であるこの街を、僕が紹介するっていうのが、何か恥ずかしい感じもするんです」と謙虚な姿の宇梶さん。
国立といえば大学通り。
国立といえば大学通り。「この通りを挟んで街の雰囲気が違うんですよ」。確かに建物やお店の雰囲気も違っていて、別々の街並に見えました。

に、映画といえば6月には宇梶さんが出演される映画「ライアの祈り」が公開されます。ずばり見所はどこなのでしょう? 「“縄文時代”をテーマにした作品なんですけど、特に事件が起きたりはしません(笑)。でも、情報が溢れ返っている現代社会のなかで、必要最低限なものだけで生活していた時代を振り返る。そうすることで、人が忘れかけていた大切な何かに気づけるかも知れません。そう思わせてくれる映画ですので、是非劇場へ。」

写真:ボクダ茂

 
宇梶剛士
Myprofile
宇梶剛士(うかじ・たかし)

1962年8月15日、東京は新宿生まれ。小平市、広島市と転居したのち、小学校時に国立へ。紆余曲折の末、タレント・錦野旦さんの付き人を経て芸能界 へ。その後は菅原文太さん、美輪明宏さん、渡辺えり子さんら実力派俳優のもとでキャリアを重ね、1997年、フジテレビ系ドラマ『ひとつ屋根の下2』の前 園俊雄役で知名度が上昇。以降は、多数のテレビドラマや映画で活躍。
Information

宇梶剛士さん出演映画
「ライアの祈り」
6/13(土)より有楽町スバル座他全国ロードショー!

映画『ライアの祈り』---それは、人生に臆病になっていたひとりの女性が“人間本来の生き方”のエッセンスに満ちた“縄文時代”に触れ、自身の幸せのカタチを見出して一歩踏み出していく姿を描く、優しさ溢れる感動作。

製作総指揮:川阪実由貴 監督:黒川浩行
脚本:寺田敏雄原作:森沢明夫「ライアの祈り」(小学館文庫)
出演:鈴木杏樹、宇梶剛士、武田梨奈、水嶋仁美、大島蓉子、
村田雄浩、中本賢、秋野太作、藤田弓子
配給:アイエス・フィールド

c2015 「ライアの祈り」製作委員会 c森沢明夫/小学館