今月の街先案内人

今回のゲストは元タカラジェンヌで女優の遼河はるひさん。宝塚時代の東京における拠点であった日比谷で、思い出を語っていただきました。

宝塚入学への一番の関門は、両親の説得でした(笑)

 思春期頃の多くの女性にとって、宝塚歌劇団は憧れの存在だと思います。その中で男役として活躍された遼河さんが、宝塚を目指したきっかけは何だったのでしょうか?

「高校生の頃に、母の友人に連れられて観劇したのがきっかけです。きらびやかな世界に、すっかり魅せられてしまいました。そこから、宝塚音楽学校への進学を目指し始めたんです。ところが、受験の課題にバレエの項目があったので、焦りましたよ(笑)。 私はバレエの経験がなかったので…。
でも今思うと最大の関門は、受験する前に両親を説得することでしたね。とにかく真剣なんだということを手紙にしたためて読んでもらったのが功を奏したみたいです。」

 宝塚を退団された後に所属されたのは、お笑いの事務所としてイメージが強い「人力舎」ですが、どうしてそこを選ばれたのでしょう?

「現役時代にCSでやっていた宝塚の番組に出演したとき、あれ?これは楽しいぞ!って感じたんです。これまでは、文字通り役を演じてきたわけですけど、バラエティ番組では素の自分の言葉で伝えることができるという発見です。それがきっかけで、テレビでのお仕事に興味を持つようになりました。
 実は、退団した直後は、ゼロからテレビ業界へ飛び込もうと、一度舞台から離れてみたんです。
ところが、仕事が全然ない…。結局1年以上も、ほとんど仕事がない状態だったんですけど、これが精神的にキツかった。仕事を取る難しさを痛感させられましたね。せめて仕事がない時間を無駄に過ごさないため、何か資格を取ろうと考えてチャイルドマインダーを取得したんです。この時期、人生で初めてのアルバイトを経験をしました。ベビーシッターです。元々子ども好きでしたし、いい経験になりましたね。


「演じるだけでなく、自分の言葉で伝えることにも挑戦したかったんです」と今の事務所を選んだ理由を語る遼河さん
「演じるだけでなく、自分の言葉で伝えることにも挑戦したかったんです」と今の事務所を選んだ理由を語る遼河さん。
オシャレなオフィス街の元祖的な街である日比谷。「歩いているだけでも楽しめます」とは遼河さん。
印象に残っている仕事は、初めてバラエティの現場を経験した「天才!!カンパニー」だそうです。

とはいえ、肝心のテレビの仕事を軌道に載せるにはどうしたらいいものやら…と、そんな時期に、今のマネージャーと出逢い、後々、人力舎でお世話になることになりました。
 今は女優としての成長はもちろんのこと、バラエティ番組でも通用するトークを磨いたり、とっさのことにもコメントできる瞬発力を高めていきたいですね。バラエティの現場って臨機応変を求められるので、とても刺激的です。日々、勉強の毎日ですけど、だからこそやりがいもあるんです。」

“日比谷”は今の私を作り上げる上で、必要不可欠な要素。

 遼河さんにとって日比谷は、宝塚の現役時代の思い出が多いでしょうから、やっぱり職場というイメージなのでしょうか?

「宝塚って、単なる職場とも違った環境なんです。全員が学校のOGですから、同級生だったり、先輩後輩の間柄。多感な時期を同じ釜の飯で過ごしてきた仲間は、むしろ家族に近い感覚です。そんな人達といっしょに、プロとして舞台に立てたという感慨深い街ですね。
 お稽古で怒られた悔しさ、舞台に上がったときの緊張感、終わった後の高揚感や、仲間と一緒に美味しいものを食べた楽しさ、すべての感情や経験が詰め込まれているので、今の私を作り上げるうえで、欠かせない要素の一つだと思います。
 でも、退団したあとに改めて感じるのは“日比谷”という街は他の繁華街とはちょっと違った雰囲気だなぁ、ということ。劇場がとにかくたくさんありますから、観劇が趣味の人も多く集まりますよね。そのせいでしょうか? それに皇居が近かったり、帝国ホテルがあったりと、なんとなく厳かな空気に包まれているように感じます。そういう空間にいても落ち着いていられる人って、大人っぽい方が多いでしょ。ずばり“大人の女性が似合う街”なんじゃないかな?と思いますね。」
オシャレなオフィス街の元祖的な街である日比谷。「歩いているだけでも楽しめます」とは遼河さん。
オシャレなオフィス街の元祖的な街である日比谷。「歩いているだけでも楽しめます」とは遼河さん。
「都心中の都心なのに、日比谷公園や皇居など緑地が多いので、休日の散歩にもちょうどいいと思いますよ」
「都心中の都心なのに、日比谷公園や皇居など緑地が多いので、休日の散歩にもちょうどいいと思いますよ」

写真:ボクダ茂

 
遼河はるひ
Myprofile
遼河はるひ(りょうが・はるひ)

愛知県名古屋市出身。元宝塚歌劇団・月組男役スター。高校生の時に初めて観た宝塚に魅せられ、1994年、宝塚史上もっとも倍率の高い年に宝塚音楽学校に入学。1996年、宝塚歌劇団入団。数々の舞台を経て、2009年退団。退団後は女優・タレントとして活動。バラエティ番組にも多数出演し、活躍の幅を広げている。2016年の3月からは東京新聞のイメージキャラクターも務める。