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  • 小日向文世 × 西麻布

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西麻布が私のホームタウン
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今月の水先案内人小日向文世
今月の街先案内人
今回のゲストは俳優の小日向文世さん。19年間通い続けた“西麻布”の街の魅力を、当時のおもしろエピソードと共に語っていただきました。2019年1月公開予定の新作映画『かぞくわり』についても、伺います!
役者の楽しさを知ったのは、
小学校の学芸会「こぶとり爺さん」。
 強面な極悪刑事から気弱なおじさんまで、幅広い演技でいまや日本映画には欠かせない名バイブレイヤーとしての地位を確立させた小日向文世さん。2019年の1月に公開される最新作『かぞくわり』では、どこか頼りない普通のお父さんを演じ、その役柄にも関わらずますます存在感を増しています。

そもそも、この業界を目指したきっかけは何だったのでしょうか?

「22歳までの紆余曲折の悶々とした自分から漠然と脱却したかった。自己顕示したかったんだと思います。」
「これといった明確なきっかけは思いつかないんだけど、改めて思い返してみると小学校の1年生と2年生のときにやった学芸会かもしれないね。フットライトの明るさと、書き割りに使っていた笹の匂いは今も鮮明に覚えていますから。緞帳が上がって、目の前には観客の父兄、終わって拍手をいただくという経験は、幼心に強い印象を与えたと思います。特に小2のときの演目が『こぶとり爺さん』で、僕の役は悪い方のお爺さん。最後に良い方のお爺さんのコブもつけられて、両頬のコブを抱えながら『え~ん』って泣いたところで幕が降りるの。それが妙に気持ちよくってね。そうやって思い返してみたら、僕は中学生時代も卒業生を送る会で、自作の脚本で上演してたし、中3では『リア王』の道化役を演じてました。
 あくまで学芸会での話ですけど、意外と意欲的にやっていたんですね。これが高校生になると、まったく演じることに無関心で、カメラの専門学校を卒業するまで、演劇の事自体を忘れていましたから。それが、あるとき本当に自分がやりたいことは何だろう?と掘り下げていったとき、ふっと“俳優”という言葉が浮かんだんです。そこは本当に突然なんですよ。でもよくよく振り返ってみれば、その幼少期の学芸会での楽しさが忘れられなかったということかも知れません。」
  • 小日向文世

    よく通る声で淀みなく面白エピソードを語られる姿は、まさにスクリーンで観る小日向さんのイメージそのままです。

  • 小日向文世

    カメラの専門学校を卒業されているだけあって、撮る側からの配慮でカメラマンへの気配りも素敵でした。

悪人であっても善人であっても、“演じる”という作業自体は変わらない。

思い出の蕎麦屋「長寿庵」を前に、興奮冷めやらずな小日向さん。「まだあるってことは、美味しいって証だよね。」

異なるキャラクターを演じるにあたって、何か心がけていることはありますか?

「役柄が悪人であろうが善人であろうが、他人を演じるという作業自体に変わりはないので、役によってアプローチが変わるということはないですね。ただ、『アウトレイジ』のときのように普段の自分と異なるキャラクターを演じるときは、ある種の緊張感があるのは間違いないかな。
 本来の自分と距離がある場合、寧ろ客観的に自分を観ることができるので、役を構築していく過程がわかりやすくもあるね。
 反面、今回の『かぞくわり』での役は本来の自分に近い部分が多い。こういうときは、役をすんなり落とし込むことができる。
 やっている作業は同じでも、そこに至るまでの時間が異なるということはあるかもしれませんね。ちなみに、今回はなかなかうまい具合に出来上がったと思います。」


今後の展望や目標のようなものがあったら、教えていただけますか?

「今回の脚本は、なかなか難解な部分があるんですよ。それで、観た人たちがどこまで理解できるのだろう?という懸念が台本読みのときからあったので、一度監督と堂下家キャスト全員で、家族会議を開きました(笑)。
 その機会は、脚本のブラッシュアップだけでなく、まさに演じる家族の結束を高めることに役立ったと思います。
 映画の見所としては、やっぱり全編奈良で撮影しているので、奈良の美しい街並みを観て欲しいですね。今作では、国宝の曼荼羅がある「當麻寺」で特別に撮影をさせていただきました。本来はなかなか撮影許可が降りないところで、何度も取り直しをした“鈴を鳴らす儀式のシーン”は、とても美しく仕上がっています。是非スクリーンでご覧いただきたいです。」
  • 小日向文世

    大人のお洒落な街・西麻布らしく、スーパーマーケットというよりもマルシェを意識した店構え。裏道でさえお洒落です。

  • 小日向文世

    静かな裏通りには、小じんまりとしながらも居心地のよさそうなカフェやレストランがたくさん!

写真:ボクダ茂
PROFILE
  • 小日向文世プロフィール
  • 小日向文世(こひなた ふみよ)


    1954年(昭和29年)1月23日生まれ。北海道出身。
    東京写真専門学校を卒業後、1977年にオンシアター自由劇場に入団。
    1996年の同劇団解散まで、中核的存在として活躍する。解散後は映像にも活動の場を広げる。映画「銀のエンゼル」で初の主役、2008年1月の連続ドラマ「あしたの、喜多義男」では統合失調症で分離した一人の人間の2役という難しい主役を務める。
    2011年「国民の映画」第19回読売演劇大賞『最優秀男優賞』を受賞。
    2012年「アウトレイジビヨンド」第86回キネマ旬報ベスト・テン『助演男優賞』を受賞。近作として映画「マスカレード・ホテル」「そらのレストラン」(共に2019年)