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    いつか輝く日に

    編集局運動部 上條 憲也

記者のつぶやき
上條 憲也

いつか輝く日に

編集局運動部 上條 憲也

 「ミスターカサイは取材に応じてくれるかしら」。2月、平昌冬季五輪のジャンプ会場。取材エリアで、米テレビ局の女性記者が尋ねてきた。その日は開会式に先立って行われたジャンプ男子個人ノーマルヒル予選を翌日に控えた練習日。海外のメディアにとっても「レジェンド(伝説)」こと45歳の葛西紀明選手は注目選手の一人だった。
 「もちろん」と答えたが、少し不安もあった。試合に出場できるのは4人。5人が帯同した日本ジャンプ陣は葛西選手といえども、調子次第では現地でメンバー外となる可能性もある。それでも葛西選手は何とか4人に食い込み、翌日、冬季五輪史上最多8度目の出場記録を打ち立てた。人気におごらず、どこまでも真摯に取り組む姿勢に心が震えた。
 しかし、念願の舞台にたどり着きながら出場できなかった選手もいる。同じく5人の帯同で3種目に挑んだ複合では、24歳の渡部剛弘選手が4人のメンバーに一度も入れなかった。それでも「自分のことはどうでもいい。チームを応援したい」。仲間の活躍を信じる彼の姿はいつまでも忘れないだろう。五輪では華々しい成績が注目される。一方でその舞台に上れない選手は数え切れないほどいる。国内選考会で敗れて悔し涙を流したアルペンレーサー、競技とともに大学で経済も熱心に学ぶスノーボーダー。彼らはそれでもあきらめずに競技を続け、いつか輝く日に出合えるときがある。その日を取材できる醍醐味がスポーツの現場にはある。
※執筆記者の所属は2018年3月28日時点のものです。