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    目を凝らす日々

    編集局政治部 篠ケ瀬 祐司

記者のつぶやき
篠ケ瀬 祐司

目を凝らす日々

編集局政治部 篠ケ瀬 祐司

 想定外に、 目を奪われ続けた。
 史上初のシンガポールでの米朝首脳会談。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、会談2日前の6月10日に、高麗航空ではなく中国国際航空でやってきた。翌日の労働新聞は、中国国旗を描いた機体から降りる写真を掲載。中国が後ろ盾だ。国を空けても、借り物を使っても国内は動揺しない。自信満々なのだ。

 5月に正恩氏が中国・大連を訪問した際、空港は数時間閉鎖された。そんな混乱ぶりを取材しようとチャンギ国際空港内で待機したものの、発着遅れも入場制限もなかった。正恩氏は11日夜に、夜の街を歩き笑顔で手を振った。ベイエリアに向かうらしいとの情報を得て各所に張っていたが、これほど市民の間近に姿を見せるとは。権力継承以来、核、ミサイル開発を進めてきた人物が「普通の国のリーダー」に見えた。

 12日の会談に、正恩氏は黒い人民服で臨んだ。国際メディアセンターに居合わせた北朝鮮専門家がつぶやいた。「われわれのやり方、国家体制を維持するとの宣言だ」。共同声明に署名した後、正恩氏はトランプ米大統領の背に手を回した。超大国と互角に渡り合う演出だ。声明には非核化の具体的方法や手順はなかった。「勝者」は北朝鮮だったのか。

 正恩氏は19日に北京に飛んだ。3カ月足らずで3度目の訪中だ。正恩氏の次の一手は何か。拉致、核、ミサイル問題の行方は。想定外をつぶすため、目を凝らす日々が続く。
※執筆記者の所属は2018年6月27日時点のものです。