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3冊の本棚

文章のプロが毎回テーマに沿って、3冊の本をセレクト。
作家という書き手の視線で選ばれた本の魅力をご紹介いたします。

評論家

栗原裕一郎さん
(くりはら・ゆういちろう)

栗原裕一郎

さあ、歩きましょう!

 昨年十月に第二子になる娘が生まれた。五十歳を超えてから二人の子の親になるなんて、まったく青天の霹靂(へきれき)である。
 子供を持って思ったのは、「うかつに死ねなくなった」ということだ。折しも健康診断で胃潰瘍が発覚し、なまりきった身体に活を入れること待ったなしの状況に、にわかに迫られた昨年末だった。
 さしあたりウォーキングか、などとぬるい考えを漂わせて、さる仕事で昨年の新書一覧をチェックしていたら、「『足形』と『歩き方』は50歳で一変する」という挑発的な惹句(じゃっく)の一冊が目に入った。
 〔1〕アシックス スポーツ工学研究所『究極の歩き方』(講談社現代新書・990円)。日本を代表するスポーツシューズ・メーカーのアシックスが著者である点がミソだ。「50歳で一変する」という脅し文句は、ブラフではなく、特殊な計測装置で膨大なサンプルを集めて判明した統計的事実なのである。
 足の機能は、親指の付け根、小指の付け根、踵(かかと)の三点を結ぶ三つのアーチによって支えられているのだが、このアーチが積年の荷重と加齢で潰(つぶ)れてしまうことで変形が起こる。歩行にも衰えが出始める。その境目が五十歳なのだ。
 加齢に抗する最適なエクササイズとして紹介されるのは「インターバルウォーキング(速歩)」だ。早歩きとゆっくり歩きを交互に繰り返す方法で、運動効果が、場合によっては走るよりも高い。
 〔2〕能勢博『ウォーキングの科学』(講談社ブルーバックス・990円)は、その事実を科学的に踏み込んで解説した本で、というよりインターバル速歩を研究開発したのはこの能勢博士である。 生活習慣病や認知機能、鬱(うつ)、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)などに効果があるとされる、まるで万能の秘術のようなこの方法だが、誇張のないことがデータで確認できる。細胞レベルから説明されていて、難しいが納得が深い。ウォーキングの目標とされてきた「一日一万歩」はほとんど意味のない数値であるとか、迷信・妄信の類いも一掃できる。
 インターバル速歩に筋トレを加えると万全のようなのだが、時間の捻出が課題だ。代わりにはならないけどせめてストレッチでも。〔3〕なぁさん『生活の質が感動的に上がる なぁさんの1分極伸びストレッチ』(大和書房・1,430円)。ツイッターに投稿していたストレッチ動画が大反響を呼んだトレーナーの初著書。開始半年でフォロワーが十五万人を超えたというからすごい。僕も初期からフォローしていて、仕事の合間などにお世話になっている。症状と伸ばすべき筋肉の対応が一対一でつけられていて、わかりやすく、取っつきやすいのがヒットの秘密か。 (評論家)
  • 『究極の歩き方』
    アシックス スポーツ工学研究所
    (講談社現代新書・990円)

  • 『ウォーキングの科学』
    能勢博
    (講談社ブルーバックス・990円)

  • 『生活の質が感動的に上がる なぁさんの1分極伸びストレッチ』
    なぁさん
    (大和書房・1,430円)

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